ある島にて・・・（十六日目）

十六日目

　今日は昨日とは打って変わって空が澄み切っていた。

　曇りよりも明るくていいが。

　こうもあっさり変わると少し寂しくもある。

　おかしなものだ。

　

　たおやかな風が心地よい。

　ベットに寝転がったまま見上げる。

　あの空に大きな絵が描けたらどんなに気持ちが良いだろう。

　やはり私も自然の一部なのだ。

　だからこうして眺めていると心も和むのだろう。

　

　しばらくそうやって居たが。

　心が満たされても腹は減る。

　仕方無く起き上がりベットから降りる。

　今日は散歩がてら歩く事にした。

　道なりに果実を捩りながら進む。

　よく熟れていて美味い。

　水分も多いので寝起きの乾いた喉に染み渡る。

　そのまましばらく歩くと岩山の辺りに出た。

　そう高くは無いが。

　剥き出しの山肌は一種異様な威圧感をかもし出している。

　手をかけてみるとぼろぼろと崩れる。

　これは登山用具も無しに登るのは無理だ。

　山頂に昇れば全てが見渡せるだろうに。

　

　諦めきれない私は岩山に沿って移動する事にした。

　もしかしたら何処かから登れるかも知れない。

　しばらくは変わり映えのしない景色が続いた。

　右手に森、左手に岩山。

　それでも半ば意地になって進む。

　海が見える。

　どうやら端まで行き着いたらしい。

　それでも岩山は相変わらず聳え立ったまま。

　進入を拒む結界のように行く手を阻んでいる。

　この向こうには何があるのだろうか・・・。

　こちらの端は断崖になっていた。

　気付くのが遅かったら落ちていたかもしれない。

　海面を覗き見る。

　何処かから剥ぎ取ってきたかのようなぎざぎざの岸壁が下まで続いている。

　前方にも遥か彼方に水平線が見えるくらいで見事に何も無い。

　もしかして、ここは隔離された島なのだろうか。

　でも、この岩山の向こうには広大な大地が広がっているのかも知れない。

　そして普通に数多の人々が暮らしているのかもしれない。

　まあ、考えても解らない事は解らないか。

　そのまま居る訳にもいかないので引き返す事にした。

　流石に夜になると迷ってしまうだろうし。

　ただ解ったのはここはそんなに広くないという事だ。

　対端まで近くは無いが一日に何回か往復出来るだろう。

　しかし今日は疲れたな。

　その後住処に戻り。

　倒れるように眠った。

　改めて考えるとどうにも不思議な所だ、ここは・・・。

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