ある島にて・・・（三十七日目・心機浮揚）

三十七日目（心機浮揚）

　一つ目の梯子を登りきる。

　杭を打ちつけ蔦を巻きつける。

　それを身体にしっかりくくりつけて固定する。

　引っ張って強度を確認する。

　それからもう一つ杭を打ち別の蔦を巻きつける。

　両端を下に垂らす。

　程なくして梯子が引き上げられてきた。

　瓜も一緒に登ってくる。

　ロープ代わりになるものがあれば何とか登れるみたいだ。

　足をぼろぼろの岩肌に突き刺すようにして身体を固定し。

　片手で梯子を引き上げて軽々と組み合わせる。

　やはり並々ならぬ膂力だ。

　次行こうぜと余裕そうだ。

　梯子の繋ぎ目を蔓で縛って補強し。

　再度登り始める。

　不安だった繋ぎ目も予想以上にしっかりしているのと。

　何より下に皆がいる安心感で以外に気楽に登り続ける事が出来た。

　そして三つ目、四つ目と登りきる。

　岩山の五分の一辺りまで来た計算になる。

　この距離で落ちるとまず助からないだろう。

　改めて気を引き締める。

　一種ある高揚感で足元を踏み外さないようにしなければ。

　適度な緊張感は自分を引き締める為に常に必要なものだ。

　顔が強張ってきたのが解ったらしく。

　瓜が落ちても俺が引き上げてやらァと豪快に笑いかけてくれた。

　

　私はそれに後押しされるように更に登り始める。

　山としてはそう高くも無いのだろうが。

　それでも私達にとっては果てしなく感じる。

　中腹を過ぎた辺りで一度梯子がぐらついた。

　岩肌にしがみ付いても崩れて余計に危ないので。

　体重を前面にかけ、ひっくり返らないように必死で踏ん張る。

　木々も下になり、吹き曝しの梯子に容赦なく吹き荒ぶ。

　風が一時収まった所で。

　両側に杭を打ち、蔦を張り。

　岩肌に貼り付けるように固定する。

　まだぐらぐらと揺れていたが。

　もうバラける心配も無いだろう。

　安心してゆっくりと登りだす。

　瓜は手足を岩肌に突き刺すようにして固定していた。

　でも結構風に揺られているのも楽しそうに見えた。

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