ある島にて・・・（三十日目・天盲怪悔）

三十日目（天盲怪悔）

　久しぶりの住処で目覚める朝。

　いつもの日常を感じる。

　木の枝で歯を磨き。

　ペットボトルの水で顔を洗う。

　しかし朝食前に歯を磨くのも如何なものやら。

　

　今日は件の投票日。

　私には投票権は無いけども。

　明日の当選発表が気になる。

　上手い所に収まるといいんだが。

　まあなるようになるだろう。

　特にする事も無いので浜に出てみる。

　何か不穏な気配がしたが。

　まあこっちもなるようにしかならないだろうし。

　潮風の独特の匂いが海暮らしの私には心地よい。

　いつもの光景と言うのは飽きそうで、それでいて酷く落ち着くように思う。

　変化を常に望んでいても、それを怖れる心も同時にあるのだろう。

　人の心は矛盾だらけだと誰かが言った。

　捻りも落ちも無いな。

　砂粒に足裏を押される感触を楽しみながら歩く。

　そこに違和感を感じた。

　いや、砂にでは無くその光景の何かが・・・。

　うーん・・・・おや。

　急に目の前が陰る。

　頭を数回振ってから再度見る。

　まだ黒い。

　二、三歩後ずさりよく見てみると。

　そこはずんぐりと黒い大きな樹だった。

　何が同と言うことも無く。

　ただでかい。

　とにかくでかい。

　そして無意味に黒い。

　触ってみる。

　表面はざらざらと蠢いていて微妙に柔らかい。

　これは樹と言うより・・・・。

　幹にそって目線を上げていく。

　四、五ｍほど上に大きな毒々しい真っ赤な花が咲いていた。

　あれは・・・・あれが噂のラフレシア？

　とするとこれは幹でなく茎なのか・・・・。

　これがラフレシアなのなら。

　あの地面に覗いてる花の下には何ｍもの茎が・・・。

　たまにぷしゅっと言う音ともに黒味がかった緑色の粘り気のある液体がどくどくと排出されている。

　逃げよう・・・。

　私は貝拾いもせずに慌てて走る。

　しばらく後で後ろからブンブンと何か細長いものを振るような音が聞こえた。

　見るのが怖かったので振り返らずに走った。

　砂浜は走り難い・・・。

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