ある島にて・・・（二十一日目午前）

二十一日目（午前）

　今日は程よく晴れた日だった。

　ぐっと背伸びをして欠伸をする。

　それで少しは頭も起きる。

　いや、起きようとし始めるのかな。

　

　昨日の残りの貝を石焼にして食べ。

　枝で歯を磨いて一心地つく。

　軽く体操をして身体を動かす準備をする。

　頭も本格的に目覚めてきた。

　

　そのまま街へと向かう。

　３０分ほど歩くので散歩にも丁度いい。

　喉が渇いたので果実を捩る。

　この果実も実に美味い。

　でも最近何だかあの不味い実が懐かしい。

　街は今日も活気と賑わいを見せていた。

　これが街たる所以と言うものだろう。

　昼食、夕食の買い物に走る主婦。

　そこかしらを走り回る子供達。

　威勢のいい店員の呼び声。

　店を覗くと色んなものが並んでいた。

　どこから取って来たのか見たことも無い山の幸が並んでいる。

　果実や木の実が豊富に取れると言っても、いつもそれでは飽きてしまう。

　だから何処に行こうとこういう店は需要があるのだろう。

　色々とやる事があって取りに行く暇が無いのもあるだろうし。

　私もついつい見入ってしまった。

　本来買い物も好きな性質なのだ。

　別に何を買う訳でなくても、ただ商品を見ているだけでも楽しいものだ。

　細工物やら色んな物があり、久しぶりに有意義な時間を過ごしたのだった。

　

　腹も空いてきたので近くの飲食店に入る。

　お食事処「御伽草子」と書いた看板が見えた。

　入ると頑固そうなジャガイモが調理に励んでいるのが見えた。

　愛想の良い店員らしき里芋が迎えて、席に案内してくれた。

　メニューをみても良く解らないので。

　お勧めのへんじゃもんと言うのを頼んだ。

　結構流行っているらしく忙しそうにころころと転がっていた。

　十分ほどすると何やらへんなものを運んで来た。

　真に珍妙で変な物としか言い様が無い。

　しばらく繁々と眺める。

　それを見た里芋が。

　お客さん早く食べないと伸びますよと言って転がり去った。

　しかし伸びると言われても。

　どんぶりの中に一本の細長い物が御汁に浸かっているだけで。

　これが伸びてどうなるものかと言う感じだった。

　とは言え腹が減っていたので早速つるつると啜る。

　何かぐにゃっとしてもちっとした感触で何もかも変だった。

　しかし何故か美味かった。

　何が美味いのかと言われても解らない、そんなとにかく変な物だった。

　はたと気が付いたが。

　私はお金を持っていないではないか。

　うーんと唸って考える。

　他にやる事も無いので取りあえず考える。

　

　何やら大きな音がしたので見てみると。

　表が騒がしい。

　皆が何だ何だと外に出るので。

　それに紛れてこっそり脱出する事に成功した。　　

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