ある島にて・・・（二十一日目午後）

二十一日目（午後）

　人ごみに紛れて出てみると。

　牛蒡が大きな西瓜に持ち上げられて睨みつけられている所だった。

　その西瓜も如何にもな煤けた感じで模様がやけにぎざぎざしていた。

　よそ見していてとか、ぶつかっておいてお詫びはそれだけか等と聞こえる。

　これは不味いと思って間に割って入ろうとすると。

　そこに何処からかメロンが現れた。

　そうして西瓜と何度かお決まりの言葉の応対があった後。

　メロンの顔に免じて許してやるなどと捨て台詞であっさりと西瓜が去って行った。

　その後牛蒡に近寄り、いつもの胡散臭い笑顔で慰めた。

　それを見ていた街の人は流石はメロンさんだと拍手で誉めちぎった。

　私の見る限り第一声はふんぞりピーマンだったと思う。

　何だか茶番じみていたが人のいい牛蒡はぺこぺこお礼を言っていた。

　私はどうにも変な心地なので西瓜をこっそりと追いかける事にした。

　勿論店員に見付かる前に逃げねばならいというのもある。

　西瓜はその大きさに似ず機敏な動作でするすると小路に入って行く。

　後を追うのも一苦労だった。

　しばらく行くとなんとふんぞりピーマンが待っていた。

　ピーマンはご苦労と言ってお金を差し出し。

　西瓜はありがとうございやすと揉み手さながらで受け取る。

　メロンさんも用心深いですなあと言いながら。

　ピーマンはメロン様の名前を出すんじゃないと言ってぽかりと殴った。

　西瓜は驚くぐらいびくびくして黙った。

　案外臆病なのかもしれない。

　そのまましばらく身を潜めて二人が帰るのを待つ。

　それにしても、こんなに解りやすい構図だったとは。

　もうちょっとひねれと腹が立ったが仕方が無い。

　案外世の中簡単なものの積み重ねで難しく錯覚しているだけなのかも知れない。

　今のメロンの人気なら茶番でも疑う者はいないだろうし。

　とにかく牛蒡が更に著しく不利になってしまった。

　こうして悩んでてもしょうがないので老人参に相談する事にした。

　話を聞いた老人参はさして驚いた様子も無く淡々としていた。

　どうやら、そんなのは見慣れた手なのらしい。

　メロンはそんなちょっとした事を大げさに演出して今の人気を得てきたらしい。

　ちょっとした事だから証拠も無く。

　例え西瓜が白状しても皆信じはしないだろうと溜息をついた。

　その日はそれからずっと二人して溜息をついていた。

　

　私は帰る道々考えていた。

　もっと多くの証言か証拠が必要だ。

　こういう場合の牛蒡はめっきり頼りにならないし。

　私は牛蒡の心からメロンにお礼を言っていた姿を思い出し。

　三度大きな溜息をついた。

　そして私は前科一犯・・・・。

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