ある島にて・・・（二十九日目・疾風迅雷）

二十九日目（疾風迅雷）

　何かの大声で目が覚めた。

　眠気眼をこすりこすり起き上がる。

　ドタドタバタバタと出入りじゃあ、出入りじゃあと言う声が聞こえる。

　頭を振り払うと少し目が覚めた気がする。

　立ち上がりドアを開ける。

　へたの変わりに鍋をかぶった茄子が走り過ぎて行く。

　向こうには鍋のふたを頭にのっけた南瓜が見える。

　無意味に騒いでるように見えるのは気のせいだろうか。

　あっ、南瓜が床を破って落ちて行く・・・。

　白菜が天井に頭をぶつけた。

　こんな狭い所を走り回るから・・・。

　

　胡瓜に呼ばれて甲板に出る。

　整列！と瓜が叫ぶ。

　後ろから足音が怒涛のように迫ってくる。

　危険だ。

　胸騒ぎがして横に移動する。

　怒涛の塊が土煙と共に横を走り抜けていく。

　そして土煙達は瓜の前にびしっと整列する。

　鍋だのふただのフライパンだの誰も彼もちぐはぐな格好で顔だけは凛々しい。

　じゃあ行くぜと瓜が駆け出す。

　エイエイオーとそれに続く。

　私も慌ててそれについて行く。

　しかし速い。

　土煙たちはどんどん彼方へ過ぎていく。

　じりじりと離されつつも必死に喰らいついて行くのがやっとだった。

　やはり運動能力もかなりの差がある。

　木々が横を駆け抜けていく。

　見失いそうなぎりぎりで土煙たちは止まった。

　ほっとしつつも急いでそこへ向かう。

　すると瓜がお前は此処で見てろ。

　そう言って選挙演説中のメロンの側に居るピーマンに向かって行った。

　そしていきなり殴りつける瓜。

　慌てながらも体勢を立て直すピーマン。

　いつぞやのじゃがいもと里芋に見付からない位置に移動する私。

　たちまち大騒ぎになる。

　西瓜達が囲いを作って邪魔が入らないようにする。

　再び激突する瓜とピーマン。

　驚くべき事にピーマンがあの瓜と互角に渡り合っている。

　老人参と牛蒡が群集整理をしている。

　メロンは唖然呆然。

　牛蒡はいざという時に力を発揮するタイプらしい。

　そしてメロンはまったく逆だった訳だ。

　意外な所で意外な効果があったのかも知れない。

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