ある島にて・・・（二十七日目捕物帖）

二十七日目（捕物帖）

　今日は朝早くから瓜がやって来た。

　準備に手間取ったがもういけるぜと豪快に笑う。

　それを見てると何だか清々しい気分になってきた。

　それくらい気持ちの良い笑顔だった。

　そして焚き火越しにどっかと座ると。

　でもその前にと沢山の果実や山菜を下ろし。

　良いのがあるじゃねえかと茄子と胡瓜と四人で朝食を取った。

　私は貝もどうだと勧めたが。

　やはり彼らは海の幸は食べる習慣が無いらしい、とても吃驚していた。

　とくかく瓜がこれまたよく食べる。

　見る見るうちに大量の食料が消費され。

　瞬く間も無く綺麗に平らげてしまった。

　ちょっと食べ過ぎた気もするが、久しぶりに楽しい朝食になった。

　それから街の方へと向かう。

　西瓜達のねぐらは私の住処から町を挟んで丁度真向かいの位置にあるらしい。

　なんでも漂着船があちらにもあるのだとか。

　やはりここは潮の関係で色んなモノが流れ着きやすい所なのだそうだ。

　自然のゴミ捨て場みたいなものだと瓜が豪快に笑った。

　茄子と胡瓜は緊張しているようで、口数は少なかった。

　瓜に大丈夫かと聞いてみると。

　こいつらはどうしようも無くなって開き直らないと根性出ねえんだと言って溜息を付く。

　

　街を通り抜け。

　林の道を行く。

　結構な道のりだったが私もどうやら鍛えられたらしい。

　息切れもしないし平気なものだった。

　人間本当は思ってるよりもずっと頑強なのかも知れない。

　繊細な心？

　いやいやいざと決めたら雑草よりも遥かに強い。

　だから地上に君臨しているのだろう。

　

　もう少しだと瓜が言う。

　それから５分ほどさらに歩くと。

　森の向こうに海が見えた。

　木々が窓枠のように連なり、窓から眺めてるような錯覚を受ける。

　空のある窓だ。

　森の途切れに出る。

　ここからは慎重に行くぞと岩陰を伝いゆるゆると近づく。

　まともにやってら危ねえと瓜。

　だんだん顔がしまって来た茄子と胡瓜。

　眼と勘の良い茄子が様子を覗う。

　船の前の岩場にトマトと白菜がいるらしい。

　日が暮れないとここに来ないから今なら手薄だと瓜が言う。

　そして茄子と胡瓜、私と瓜に別れ船に近づく。

　トマトも白菜も暇そうにぼんやりしていた。

　今だッ！！っと怒声を上げて一気に突っ込む。

　こちらのターゲットは白菜だ。

　大きな身体に体当たり。

　白菜が怯んだ所に瓜が圧し掛かる。

　あれよあれよと言う間にぐるぐる巻きにされたトマトと白菜の出来上がり。

　だらしねえ奴らめ、腑抜けやがってと瓜が怒鳴る。

　二人とも貫禄負けと言った感じでびくびくしている。

　もはや戦意は無いみたいだ。

　瓜に怒鳴られて昔の子分時代を思い出したようで。

　親分すみやせんとぺこぺこ謝っていた。　

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