ある島にて・・・（三十八日目・暴露霧散）

三十八日目（暴露霧散）

　くぐもった空気を振り払うように。

　咳き込みながら中に入る。

　しばらく堪えているとそれでも少し慣れて来た。

　でも外の空気が綺麗だったせいもあり。

　息苦しさは無くならなかった。

　

　軽く咽びながら室内を見渡す。

　壁一面のモニター。

　仰々しい機械の群れ。

　一つだけある椅子。

　小奇麗に片付けられた書類の束。

　そして椅子には誰かが座っていた。

　しかしそこには生命の欠片も感じる事は無く。

　誰かと言うよりも。

　最早何かが座っていたと言う方が正しいのかもしれない。

　遠目にも服は擦り切れて埃を被っているし。

　腕の部分には角張った白いモノが見える。

　まさに命の残骸。

　モニターには一つ一つ別の場所が映っていて。

　外で見えた光景と同じく。

　映っている風景はまちまちだった。

　統一感があるとすれば。

　いずれも彼方先には岩山か大海原がある事だった。

　そこには野菜や恐竜のような者、果物、金属岩石が自由に闊歩する姿も見られた。

　そこに居る者に環境が合わせてあるような印象を受ける。

　こうして改めて見ると。

　自然界には存在できない景観だとつくづく思わされる。

　素人目で考えても。

　砂漠と森林と湿地なんてものが。

　岩山一枚隔てて綺麗に共存なんて出来る訳がない。

　しかも気候も天候も違うように見える。

　これは一体どういう事なのだろう。

　

　うろたえ気味に近寄ると。

　椅子に座ってたモノがガラガラと崩れ去った。

　そして椅子の残骸の上に一冊の厚い本が乗っている。

　計器類には天候やら気温やら書いたラベルが貼られていた。

　私は本を手に取って目を通す。

　どうやら日記と言うか観察記録のようだった。

BACK・ EXIT・ NEXT