ある島にて・・・（三十八日目・興亡隆盛）

三十八日目（興亡隆盛）

　日記には淡々と記されていた。

　それは著者があまりに異端な説を唱えた為に。

　学会を終われて所から始まっていた。

　転々と各国を彷徨い盥回しにされた挙句の事だったようだ。

　しかしそれですべてに絶望した訳では無かった。

　どうやらこの人にはありあまる程の資金があったらしく。

　それも手伝って。

　認められないのなら自分で実行して。

　自分が正しい事を見せ付けてやろうとしたのだそうだ。

　

　彼の説とは。

　人が動物から人類に進化出来るのだとすれば。

　それは必然ではあったのだろうが幸運の産物であり。

　その可能性は全ての生命体に等しく公平だったはず。

　だとすれば。

　どの生命体にも人類と言われる。

　知恵と知識を得る事が可能であり。

　それも必然の事であるというものだった。

　それは他人事として聞く限りは真理のようで。

　また、確実に何かが間違っているようにも感じられた。

　私には大した知識は無いから判断のしようも無いのだが。

　このモニターには歴然とした結果が映されているのも確かだった。

　

　日記よれば彼が最初に目を付けたのは恐竜だった。

　私も最も可能性が高かったろうと思う。

　しかし幸か不幸か爬虫類は衰退し。

　現在地上を覆っているのは哺乳類な訳だが。

　そしてこの試みは成功してしまったらしい。

　彼は地球上にわずかに残っていた恐竜種の生き残りを探し出し。

　人里はなれたこの場所に隔離して。

　ひっそりと研究に研究を重ねたようだ。

　この成功に益々自信を付けた彼の探究心は。

　動物を越えて植物。

　はたまた鉱石等まで及んだらしい。

　その結果もモニターには映されている。

　だが彼は結果を見る事は無かったようだ。

　後半の文字はいかにも弱々しく儚く力が無い。

　詳しくは解らないが病に冒されていたらしい。

　こんな所に一人で何十年も篭って居ればそれも当然だと思う。

　ただ日記には彼の事は一つも無く。

　研究の観測と結果だけが淡々と記されていた。

　そして最後のページには一言だけくっきりと力強く。

　確信した。人を創ったのは神ではない。ただの自然現象なのだ。

　その後のページは全て真っ白だった。

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