ある島にて・・・（三十八日目・有限一夜）

三十八日目（有限一夜）

　張り詰めていたものが満足と共に切れて。

　そこで力尽きるように行ってしまったのか。

　その字はその結果を誇示するようにくっきりと目に映る。

　おそらくこの人生は充実していたのだろう。

　人の幸せは自分で決めるものなのだから。

　探究心を満たせて燃え尽きるのも。

　何だか私にはひどく羨ましかった。

　誰かに認めてもらうだけが人生じゃないと。

　そう語っているように心に響いたのだ。

　そのせいで自分の今までの人生が。

　とてもつまらないものにも思えて来たが。

　そう思う事自体が不幸なのであって。

　誰の人生も本来は素晴らしいものだと思い直した。

　昔の人も気の持ちようと言う言葉を残している。

　何かが私の中からこみ上げてきて。

　声を上げて笑った。

　

　モニターの中にも数多の人生が映り込んでいる。

　これらの機械は主人が消えて尚。

　人知れず自らの仕事を勤勉にこなしてきたのだろう。

　そこに住む者達が最も過ごしやすい環境を生み出し、維持し。

　来訪者と来訪物を糧として進化を促進させる。

　それがここのシステム。

　

　日記によれば来訪者達はやはり度々現れたようだ。

　潮の中心のような場所でもあるし。

　近海で難破すると自然にここへ流れ着く。

　そして来訪者達は常に絶望して無茶をして朽ち果てる。

　その躯はあらゆる意味で最上の糧となる。

　不思議な事にいままでの来訪者はここの者と共存しよう等とは夢にも思わなかったようだ。

　その為ここの者にとって生きていては有害だと判断される。

　進化するに当たって。

　天敵の存在は必ずしも有害とは言えないが。

　ここの住民はいずれも数が少ない為に。

　障害となる危険のあるモノはすべて排除するようプログラムされているようだった。

　私だけが生き延びられているのも。

　幸運だけのせいでは無かったという事だ。

　

　私は静かにその日記を元の場所に戻した。

　それから敬意を込めて一礼する。

　どうやらこの岩山をずっと行けば。

　私の元の世界に戻れるらしい。

　私は一度さよならを言う為と報告に戻る事にした。

　そして仮眠を取るべく先ほどの部屋に戻った。

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