ある島にて・・・（四十日目・終結此方）

四十日目（終結此方）

　どれくらいの距離を歩いたのか。

　不思議とどんなに長い距離でも終わりは来るもので。

　それは考えれば当たり前なのだけれども。

　歩き始めた時のあの途方も無さから考えると。

　酷く不可思議な事のように思う。

　そう思う事自体も不思議なら何もかもが不思議だ。

　

　考えてみれば。

　不思議と言うのはただ自分が知らないだけの事なのだから。

　不思議不思議言うのは私は無知です無知ですと言っているのと同じかも知れない。

　そう思うとまた心から笑いがこみ上げてきた。

　人間とはなんと無力で愚かで・・・そしてなんて愛らしいものだろうか。

　そして私もその一人。

　こりゃ自画自賛かと。

　再び大いに笑った。

　下に居る者達には不気味な笑い声に聴こえただろうなと思いつつ。

　岩山の切れ目がすぐ先に見える。

　終着は近い。

　ここでの想い出を一つずつ心に焼き付けるように。

　一歩一歩確かめるように踏み出す。

　逸る気持ちと後ろ髪引かれる気分を抑えながら。

　心は常に震える方がいい。

　そして岩山連の端に立つ。

　見下ろした景色は懐かしく、私の世界だった。

　そこから下へはゴンドラのような物で降りれるようだ。

　これで降りれば本当にさよならだ。

　彼方には街のようなものも見える。

　あの街までしばらくかかるだろうな。

　少しげっそりしつつある自分を鼓舞しながら。

　私はゴンドラで下まで降りた。

　長年使ってなかったらしくギシギシと嫌な音がそこかしこからしたが。

　聴こえない振りをして何とかやり過ごした。

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