1.暗闘


 静けさが極まる時、その隙間からこの世ならざる者が現れるという。

 あるべきはずの動が消え、あるはずのない静が訪れる時、力ある存在が影に宿り、影はその意を帯びて具

現化する。

 その時何が生まれるか、宿主に何が起こるか、それは伝えられていない。

 全て、存在しなくなるが故に。

 或いは伝える事を拒否され、影に支配されたのか。

 解らない、誰も。

 だからこそ調べる必要がある。

 我々に未知な存在などを許しておく訳にはいかない。

 この世に起こる全ては、人の、我々の支配下に置かれなければならぬのだ。



 人降る街、天城(アマギ)。毎日のように無形の人が無数にやってきては雨粒のように弾け、消えていく。

 良識のある者は来ない方がいい。しかしその別称を知らぬくらいに無知であれば、気にする必要は無いの

かもしれない。誰も無知な貴方を裁きはしないだろう。

 無害であり、有益であるが為に。

「やれやれ、薄汚い街だ」

 この地は雨多く、一年のほとんどを曇った空で過ごす。そのせいで本来浄化されるべき何かが繁茂し、清

浄さを取り払ってしまう。つまりこの薄汚さがこの街の象徴であり、真なる何かを示しているのだが、大抵

の者はそれを知らず通り過ぎていく。

 だから表面上は平和なのだ。

「さっさと見付けて、おさらばしたいもんだが・・・」

 この愚痴っぽい男の名は九紋双一(クモンソウイチ)。何でも屋とかいう探偵を更に胡散臭くしたような

職業に就いている。

 いや、就いていると言うのはおかしいか。ようするに使いパシリであり、色んな人から都合よく使われる

だけのしがない男。

 今回失踪した女を捜しに来させられたのだが、手がかりはこの街に行くとだけ書き残された紙一枚。

「見付かるわきゃねえよな」

 こんな依頼引き受けたくなかったのだが、兄貴分に命じられれば嫌とは言えない。腐る程いる弟分の中で

彼が選ばれたのも、別に優秀とか目にかけられているというのではなく。どうせ見付からないだろうから、

要らん奴を放り込んどけ、という事なのだろう。

 要するにこの男はそれだけの、そしてそういう評価に相応しい男なのだ。

 今までは。

「だが、もし見付ける事ができれば、見直してくれるかもなあ。そうすりゃあもっと楽で儲かる仕事ができ

るだろうし、女の一人や二人もらえるかもしれねえ。駄目で元々なら、やってみる価値もあるだろ」

 双一はまず宿を探した。何をするにも拠点となる場所が要るし、それは失踪した女も同じ事。上手くすれ

ば手がかりを得られるかもしれない。

 値段を問わず色んな宿を探し(高級ホテルなんかは門前払いを食らわされた)、一日潰して街中を駆け回

ったが、手がかりになるような話は聞けなかった。

 アマミとかいう姓だが名だかあだ名だがさっぱり解らない呼び名だけでは、そりゃあ解るものも解るまい。

 自慢の我慢強さと体力だけではどうにもならなかった。

 足が捜査の基本だとかいうセリフもあるが、基本だけではどうにもならないのが実践というものだろう。

「やっぱ、駄目か」

 途方に暮れ、安宿のロビー(という程の空間でもないが)で何かの上に板を乗せてシーツを被せただけの

ソファと言い張る不恰好な物に寝転がり、よく解らない味のガムを噛みながらぼんやりと考えてみたが、何

も浮かんでこない。

 ここですかっと浮かぶようであれば、こんな仕事はやっていない。

「結局、俺は俺かよ。さて、どうするか」

 ふてくされて済めば良いのだが、兄貴分にどんな目に遭わされるか解らない。何か一つでも手がかりを見

付けなければ・・・。

 いつまでも無能者を世話してくれている程、誰も優しくない。

「うっと」

 ぶるっと体が震えた。寒気ではない、はっきりとした恐怖だ。

「あんま時間かけても怖えし、とにかく一つでも多く当たってみるか」

 双一は女の行きそうな所、人の多い所を片っ端から走り回ったが、やはり何一つ見付からない。

 ただ一つ得られたのは、妙な噂だけ。

 そうして何も解らないまま一月が経った。



 双一は諦めていた、あの場所へ戻る事を。

 こんなに時間をかけておいて手ぶらで帰る。命は無い。できるだけ節約しているものの、一月も居るのだ

からそれなりに使っている。調査にはとにかく金がかかる。

 それはすでに彼の命と天秤にかけても容易く向こうへ落ちる程の額になっていた。兄貴分達が一日に使う

金額にはとても及ばないが、彼に換算すれば数人分の命に相当する。例え調べがついて戻ったとしても、代

償は支払わされる。

「何がきても、俺は終わりだ」

 このままこの街に隠れよう。兄貴分達も初めから期待していないんだ。このまま姿をくらまして野垂れ死

んだと思われれば、むしろ好都合じゃないか。

 しかしそう思っても、この街で独り生きていく自信が無い。

 だからこそ彼は産まれた時からいつも下っ端だったのだろう。

「今更、変えられないよな。そうだよな」

 哀れ過ぎて涙も出ない。

 同情もしてくれないだろう。こんな自分では。

「いっそ、賭けてみるか」

 思い至ったのは一つだけの成果、得られた情報、奇妙な噂。

 新月の晩、とある場所、とある時、自分の影と引き換えに全ての物を与えてくれる。

 ただしその影の意が違った場合、宿主は力を奪われ喰われてしまう。

 抽象的な箇所が多く、まさに噂という噂だ。いつもなら双一もすがろうとは考えなかっただろう。

 でも今は別だ。現実的に死がすぐそこに待っているし、回避する当てはない。逃げる事も不可能だ。泣き

ながら隠れていても、野垂れ死にするだけだろう。

 ならばいっそ、そう思っても無理はない。

 誰だって。

 そう。

「誰だって、今の俺になりゃあ、そうするはずさ」

 双一は決心した。

 それにアマミって女ももしかしたらその為にここへ来たのかもしれない。今まで行った事もなく、何の関

係性も無かったこの街に突然来る理由。今の双一と同じく、わらをもすがりたい気持ちだったと考えるのは

強ち間違っているとは思えない。

 兄貴分達が捜しているという時点で、その女がどれだけ切羽詰っていたか解る。

 今頃はおそらく書置きを残した家族に、女が受けるはずだった災難が降りかかっているはずだ。

 わざわざ書置きを残したのは、おそらく・・・。

「うっと」

 ぶるっと震える。

 やけに寒い。

 知らない内に雨が降っている。

 今度は恐怖なのか寒気なのか、よく解らなかった。



 こうして双一は人捜しから噂の調査へと目標を変えたのだが、あまり関係ない行動をとっていると疑われ

てしまう。

 双一のような下っ端にまで一々監視役を付ける事はしないはずだが、金を引き出せば逐一伝わるし、それ

によってどこで何をしているのか大体解る。

 この街にも仲間が居るし、すぐに見付かる。抜けようとする者には血の粛清アリ。だからこそ組織として

まとまっていられる。望まれるのは絶対的なる恐怖と忠誠、それだけである。

「しばらくは誤魔化せると思うが・・・・、次の新月までまだ一週間もある。その間何も無いとは思えねえ。

逃げる当ても無ぇし、どうしたものか」

 双一は懸命に知恵を絞った。付いている頭が無駄でないのなら、今こそをと。

 元々あるのだかないのだか解らないものから搾り出すのだから、その苦痛は想像に難くない。

「・・・そうだ、逃げるから悪いんだ。こっちから向かえばいい」

 一度この当たりに居るだろう仲間の許に行く事にした。ただでは済まないかもしれないが、こそこそする

よりはましだろう。もしかしたら何か手がかりも得られるかもしれない。

 どうせこのまま居ても変わらない。なら、一か八かやってみてもいい。

 それでどうなっても本望だ。

 むざむざ殺されるよりはましだろう。

「よし、行くぜ」

 双一は拳をぐっと握り、その場所へと向かった。

 存在は知らされないし、知る必要もないが、あるとすれば場所は大体解る。

 仲間達はいつも似たような場所に似たような名前で似たような店を出し、そうする事で知らせずして知ら

せ、利用できるようにしている。

 言葉や文字で一々知らせるなんて愚か者のする事だ。

 だから双一もすぐに見つける事ができた。

「相変わらず悪趣味な」

 彼はあまりこの店が好きではない。

 いや、大抵の弟分達がそうだろう。この場所にはなるべく厄介にはなりたくない。

 ここもまた恐怖の対象でしかない。

 人に頼る事は無能の証であり、兄貴分達に近付く事は終わりへと同じだけ近付く事を意味する。

 店の概要をざっと述べれば、まず女が居る。これは兄貴分達をもてなす為であるし、その方が色々と都合

がよく、身を隠しやすいからだ。女の園にはどうしても男には踏み入りきれない所があり、それなりの情報

網が出来上がる。

 次にありふれている事。特別ではいけない。個性があってもならない。どこにでも自然にあるような店。

そうである事が望ましい。

 そして最後にある名を付ける事。これは絶対だ。

「よう」

「ああ」

 店番の安っぽい男は双一を見てすぐに理解したのか、親指で軽く奥を差す。

 その姿、表情からは軽蔑の色しか見えない。

 或いは自分よりも下の者が来たという安堵か。

「邪魔するぜ」

 双一は腹を立てながら、何も言わなかった。立場で言えば大差ないとしても、ここに厄介になろうとした

時点で彼の地位は三つは下がる。

 元々底辺だとしても、その中にはあるようでないような格があるものだ。

 それに彼に文句をつけたとして、得する事は一つもない。沈黙こそ美徳である。

 言われるまま奥に入るとそこには雑多な空間が広がっていた。

 女の喧騒もそうだが、ここは色んな声がする。良いものもあれば悪いものもあるし、他人にとってはそう

でも自分にとってはそうではないものもある。

 心地よい声も聴こえるが、大半は耳を塞ぎたいものばかりだ。

 双一は希望を持てるような歳ではない。老いてはいないが、若くもない。そろそろ自分の居られる場所、

住める高さを否応なしに教えられる頃だ。

 とはいえ、改めて現実を聞かせられるのは気分の良いものではなかった。

「俺もこっち側に住める可能性、未来があったのかね。昔はさ」

 溜息をもらしても誰も反応しない。その事に安堵しつつ、苛立ちを覚えながら奥へと進む。

 見向きもしてくれない女達の中をすり抜け、一番奥の部屋に達する。無用心に思えるが、もし彼が身内で

なければとうに殺されていた、或いはそれに近いか最も遠い状態にされていたはずだ。

 彼らはいつも双一達の命を手中に収めている。気付いた時は終わる時。全く上手くできている。

 女達もただの女ばかりではない。中にはいつも誰かが混じっている。その意味を双一は知りたくなかった

が、もう遅い。彼もまた、踏み入れてしまったのだから。

「慣れねえな、ここは」

 目の前に鈍く存在する扉。光を吸い込んで離さない色合いといい、素材といい、一体何でどう作られてい

るのか、考えたくもない。

 この建物そのものが、処理施設という事も考えられる。昔は人柱なんて方法もあったようだが、ご利益は

あるのだろうか。

「うっと」

 双一はぶるっと奮ってから、扉に手をかけた。

 レバーが嫌なくらい手に馴染む。まるでいつも触れている物であるかのように。

「いらっしゃい。遅かったね。待っていたよ」

 にこにこしたピエロが出迎えてくれた。

 予想していなかった訳ではないが、していた訳でもない。双一は単純に驚く、が、それも相手を悦ばせる

為の芝居でしかない。

 妙な事だけ上達したものだ。

 それで憐れんでくれれば、上出来だが。そうはいくまい。

「皆、カンカンでさ。ボクにもちょっとおかんむりなんだよネ」

 ピエロは面倒くさそうに上を向く。

 そこにあるものは見たくない。

「そりゃ全然関係ないとは言わないけどさ。ちょっと理不尽じゃない、それって、ネ」

 ピエロは大げさなポーズをとった。

 全てが芝居。うんざりする。

「・・・・・・・・」

 双一は何も言わない。許可されていないからだ。ここでの行動は慎重に慎重を重ねなければならない。彼

の命の重さはピエロの気まぐれにも満たない。

「ん、いや、まあそんな気にしないでいいよ。いつもの事だから。ボク、あいつ好きじゃないし、どうでも

いいんだ。むしろあいつを困らせている君に協力したくなったよ、ウフフ」

 メイクのおかげで顔色を読めないが、怒っているようではなさそうだ。

 でもそんなものは慰めにもならない。

 人の心は一秒もしないで変わる。正反対にも、それ以上にも。

「んで、何しにきたの。知りたいの。何を。聞いてあげるから言ってごらんよ。ちょうど暇だからさ。色々

飽きてきたしネ」

 ピエロはそういうと派手な服を脱ぎ始めた。

 その下から予想もしていなかった美しい裸体が現れる。見事な膨らみと引き締まった筋肉に思わず見蕩れ

てしまう。

 双一は慌てて下を向いた。

「なんだ、話すの苦手なのかい。それならそれでいいけど、来た意味無くなるでしょ」

 ほっとした。どうやら彼の視線などあって無いに等しいらしい。それとも見られる事を喜んでいるのか。

からかっているのか。彼の命を。

 次に顔を上げた時、ピエロはスーツ姿の美女に変貌していた。

 ただし顔だけはそのままだ。それでも美女と解るのだから、恐ろしい。その顔がにやりと歪むのを見、ぞ

っとする。

「実は・・・・」

 双一はその笑顔から逃げ出す為に口を開いた。

 思ったよりも滑らかに言葉が飛び出したのは、彼女に操られていたからかもしれない。



 双一は震えたまま外に出た。店番の視線なんか目に入らない。数日はずっとあの笑顔が脳裏から離れない

だろう。そして教えるのだ。これが恐怖であると。

 パブロフの犬のように餌を与えてくれたなら、まだ良かったのに。

 だが情報は教えてくれた。本人が会ってくれたのだから、彼女もそれに興味があったのだろう。つまり今

度はピエロの為に働けと、そう言っている。

 満足する結果を持ってくれば、命も助けてくれるかもしれない。

 そこまでは虫が良すぎるかもしれないが、忘れていた希望くらいは残っている、多分。

「しかし、随分広範囲だな」

 噂の出所は一定していない。街中に分散している。

 面倒だが、街中に手がかりがあるという事でもある。それが定まらないからどうだと言うのか。どうせ逝

く所は一つなのだから、入り口は多いに越した事はない。

「よし、やるか」

 残された時間はざっと一週間。

 丁度新月の夜が来る日だ。

 都合がいい。というよりは、そうする為に今日来たのである。

 双一も何も考えていない訳ではない。

 無力ではあっても。



 六日経った。近くにある場所は大体行った。どこも暗く、雨臭く、そして湿っている事が共通している。

まるでその場所を切り取って別の場所に持っていったかのようにそっくりだ。

 そしてどの場所にも人が居ない。

 噂が出たから居ないのではなく、元から誰も寄り付かなかったそうだ。ホームレスやらその類の者が好み

そうな場所なのに、一人も居ない。

「確かに、居心地の悪い場所だったな」

 ピエロのような具体的な恐怖が無い分、そこは本当に不可解で、居るだけで気が狂いそうになる。墓場や

それに類する場所が感覚としては近いか。

 深夜の寺社にも似ている。

 神聖でありながら、その真逆でもある。そういう場所だった。

 何度行っても慣れはしない。

「望みでも叶わなきゃあ、一生行く事もねえ場所だな、確かに」

 場所は解った。後は新月のその時を待てばいい。

「さあて、死ぬか生きるか、どっちに転ぶのかね、俺は」

 少し楽しみになってきたのは、感覚が麻痺してきているからか。それともあの場所に何度も行った影響だ

ろうか。

 どちらにしても、悪い気持ちではなかった。

 今では闇が、生れ落ちた故郷であるかのように感じる。

 ピエロの笑顔にも慣れてきた。

 いや、それは強がりか。



 新月の夜を待ち、一番近い場所へ移動する。

 闇にいつもより存在感を感じる。懐かし、恐ろしい。それでも求めてしまうのは、自分の心がそうなる事

を欲しているからか。

 生きたいが滅びたい。その相反する中で、どちらにも付かずに生きてきた彼を、闇は微笑ましくも美しく

出迎えてくれるのか。

 兄貴分達が、闇に代わっただけ、そう思えなくもない。

 自嘲し、息を吸う。

 雨の臭いが鼻に付いて消えない。

 最近は降っていないのに、どうしてここはこんなにも満ちているのだろう。

 まるで降った雨の残骸が、行き場を失くして集まってきているかのようだ。

「まあ、なんでもいい。望みを叶えてくれるなら、何でもだ」

 時刻が近付いてくるにつれ、よりそれらが濃くなる。

 今なら闇を掴めそうだ。水に包まれた手で闇をしっとりと掴み、我が物とすればどんなに心地良いだろう。

それに身を浸す瞬間はそこらの店では味わえないものであるはずだ。

 闇に酔う自分を感じる。初めてこの地に来た時から感じていたそれが、耐え切れない程に強くなる。

 妙に粟立つ心と体が、それを求めて止みやしない。

 我慢できず中心へ、最も闇の深い場所へと近付く。

 闇に引きずり込まれているのだとしても構わなかった。理性的な心は無意味であり、目の前にある闇だけ

を欲する。

 その中にさえ入り込めば、あのピエロも、その同類も決して手を触れる事ができない。双一は彼女らを超

える存在として、永遠に闇へ君臨する。

 それなら、それだけで良いではないか。もう望みなど、叶わなくとも。

 しかし夢想は泡のように消える。

 いつもそうであるように。

 足音がした。現実の音が。ここにはそぐわない、外の音色。

 振り返ったその時、双一は額から温かく流れるものを感じた。

 視界の端に赤い川が見える。小さな小さな、温かい川。

「ちゃんと報告しないからだ。そうすりゃ、まだ生きられたかもしれんのに。あれでもボスはお前の事気に

入ってたんだぜ。裸を見せるくらいにはな。まあ、それが死への餞別でもあるが」

 赤い先ににやけた店番の顔が在る。

 楽しそうに、笑っている。べらべらと、どうでも良い事を並びたてながら。

 こいつは一体、誰に言い訳しているのだろう。

 死に逝く自分にか、それとも・・・。

「手柄は俺のもんにしといてやるよ。まあ、どっちでも良いんだ。良い知らせさえ、届けばな」

 彼もすぐに自分と同じ場所に来るだろう。良い知らせは彼女だけが知っていればいい。自分達が知る必要

などなく、その理由も無い。

 確かに、あの時点で彼は死んでいた。

 そしておそらく、この店番も。

 だとしたら、闇の側で死ねるだけ、自分はまだましだろうか。

「(どっちでも、同じか)」

 双一は深く目を閉じた。

 もう開く必要は、無いだろうから。




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