4.失意


 作戦が開始される。

 主軸は木崎隊。最新鋭の装備が与えられ、敵味方問わず、この部隊に対抗できるような部隊は居ない。

CA1から見れば大差ないが、他の兵器から考えれば驚異的な性能を誇っている。

 目標は長らく木崎隊を苦しめてきた敵主軍だが、彼らを援護する部隊はほぼ全てCA1によって壊滅させ

られた。主軍の力も半減し、CA1を加えれば苦も無く撃破できるはずだった。

 実際、問題無く撃破する事ができている。木崎隊だけでも充分に勝利する事ができたかもしれない。敵

がCA1を恐れて及び腰になっている事もあり、作戦は滞(とどこお)りなく進んだ。

 CA1は敵側面、或いは背後に移動し、敵陣をかき乱し混乱させる。いつも通りそれは成功し、単独で勝て

ると思える余裕すらあったが、花は木崎隊に持たせなければならない。

 何故一番優秀で誰よりも強い自分がそんな役回りを演じなければならないのか。

 もしCA1に人格というものがあれば、そんな風に考えたかもしれない。

 しかし俺にとっては興味ない事。兵器はあくまでも兵器、それ以上になってはならない。俺もそう考え

ている。機械はいつまでも機械のまま、人に使われていなければ、人の方が機械に使われる事になる。

 今でもその兆候が見えるのだから、確かな事だ。

 だから俺はそれをしない。

 もし機械が反乱を起こしても、俺だけは彼女の味方をし、同胞である機械兵達を一つ残らず叩き潰す。

 彼女の為。それだけの為に俺はいるのだ。

 今もそうだ。

 今までにない大規模な作戦。勝利を決定付ける為の作戦。その作戦を立てたのは彼女。そして見事な勝

利を収めたのだから、きっと喜んでくれる。彼女の中に何が育っているとしても、俺を認めてくれる筈だ。

 しかしその望みは儚く消えた。

 最初から最後まで、彼女が俺に微笑みかける事はなかった。

 むしろ嫌悪していたかもしれない。隠そうとしていたようだが、CA1を欺(あざむ)く事などできはしな

い。表情にある全ての筋肉から、CA1は真実だけを瞬時に映し出す。映像からでさえ、全てを分析し、はじ

き出す。

 それが俺にとってどういうものであるかは関係ない。ただ機械的にそれを映すのだ。

 俺をどう思っているのかを。



 俺にはもうどうして良いのか判断する事ができなかった。

 できる事は全てやった。彼女の望む事は全て叶えた。それなのに彼女の心が離れていく。

 止めに彼女が木崎少佐と婚約したという報が入り、俺の心は絶望に伏した。

 確かに俺はもう人間ではない。だから彼女とどうにかなるという希望は無い。彼女と木崎少佐がそうな

るのも自然の流れだったのかもしれない。これ以上の組み合わせはないし、公私共に信頼し合っている。

 だからそれは良い。祝福しよう。でも何故、俺を避ける。俺と木崎と何が違う。

 解らない。俺も木崎も戦争に勝つ事だけを求め、結果としてそれだけの為に生きてきた。ならより戦果

を挙げた俺に対し、より大きな好意を持っていい。俺がCA1という事実を知らなくても、信頼できる

兵器として気に入られてもいい筈だ。

 それなのに彼女が俺を避けるのは何故だ。

 解らない。どう考えても。いくら考えても。

 俺にできた事は、彼女を祝福する事だけだった。

 見返りを求めていた訳じゃない。ただ自分にできる事、やれる事を追求し、彼女の為にという気持ちか

らCA1になった。全ては自分の望み。誰に強制された訳でもない。俺が独りでした事。

 その望みは達せられた。戦争は勝利で終わる。彼女が危険にさらされる事もなくなるだろう。これから

は木崎少佐が公私共に護ってくれる。俺ができない全ての事を、彼が彼女にしてくれる。

 そう思い、納得するしかない。他に何ができる。

 絶望には慣れている。どういう結果でも、何もできなかったあの頃よりはましだ。例え彼女に疎まれよ

うと、何もできなかったあの頃とは違う。遠く後方で祈るだけだった頃とは違う。

 俺はCA1。彼女の望みを叶え、護ったのだ。

 でもどう言い訳しても、俺の全てを覆う虚しさと悲しみを消す事はできなかった。

 本当にこれで良かったのか。別の道はなかったのか。

 俺の選択は俺に何をもたらしたのだ。

 勝利。そんなものに意味はあったのか。

 人を捨てただけの意味はあったのか。

 解らない。何も。



 戦争を終わらせるのは外交だ。それを優位に進める為に戦争がある。

 敵軍には最早戦えるだけの戦力が残っていない。めぼしいものは全てCA1が潰したからだ。

 木崎少佐との婚約発表も戦争が終わる事を示している。勝利の後は豊かな平和が訪れなければならない。

それを知らせるには、軍の象徴となっている二人の結婚が一番解りやすく、国民の心に訴えかけやすい。

 結婚でさえ国に利用されると思えば腹立たしくなるが、彼女は満足なのかもしれない。それで国民に活

力を与えられるのなら、新たな出発の為の礎(いしずえ)となれるのなら、本望だろう。

 勝利したとはいえ、我が国も犠牲者を出し過ぎた。余韻(よいん)から覚めて冷静になれば、虚しさだ

けが浮かぶ。そこに生きよう、もう一度始めようという気力を、希望を与えてなければならない。

 その為なら、彼女は何も拒みはしない。

 それに彼女も望んで婚約したはずだ。政略的なものが見えるとしても、二人にその気が無ければそんな

話は出なかっただろう。すでに二人がそういう関係だったから、便乗するようにして利用したのである。

 そう思って調べてみると、二人の関係が随分前からそうであった事に気付く。

 俺は同じ情報を得ても、その答えから目を逸らし続けていたのだろう。奇麗事を言っていたが、本当は

見返りを求めていた。彼女に好かれたかったのだ。別に戦争なんてどうでも良い。護りたい人は彼女だけ。

欲しいのも彼女だけ。

 だから彼女の身も心もすでに誰かのものだと考える事を避けていた。

 人間の体を捨てた今でも、俺はどこかで期待していたのかもしれない。

 愚かな愛を。純粋な愛情を。

 例えば昔から俺に対して・・・・。

 そんな事はありえないのに。

 解っていたのだ。そういう身勝手な想いだと。

 もしかしたらそういう心が彼女を遠ざけさせていたのか。彼女は知っていたのか、この愚かな心を。

 だとしたら、これは正当な報いである。

 確かにこれは絶望すべき事だ。

 しかしそんな俺に対し、彼女からお呼びがかかった。

 それも命令としてではなく、CA1との間に設けられた直接の上司である彼女以外には使えない専用回線

を用いてだ。その言葉も今までのように公的なものではなく、古い友人に対するかのような慈愛に満ちて

いた、ように思う。

 それが良い方にか、悪い方にかは判断できないが。喜びは溢れてくる。

 ようやく認めてくれたのだ。彼女が俺を認めてくれたのだ、とそれだけを想っていた。



 俺は一人になって彼女を待った。短い時間なら、望めば一人にさせてくれる。俺は勝利の最大の功労者

の一人。ある程度の我侭は通せる。今までも常に誰かに見られている事に我慢ならなくなった時、同じよ

うな事を願ってきた。

 初めは不審そうにしていた研究者達も、今では当たり前のようにそうさせてくれる。

 CA1が高度かつ繊細(せんさい)にできている為、人と同じようにそういう時間が必要なのだ、と解釈し

ているのかもしれないし。俺の事を知る誰かが、温情を示してくれているのかもしれない。

 なんにしても、人払いをする事は簡単だ。

 誰にも知られずに目的地へ行く事もCA1にとっては容易い事。早速指定された場所に向かう。

 そこは普段は利用されていない一室。防音完備されており、人が来る事もほとんどない。密会するには

最適の場所。現に様々な理由で利用されている。そこはおそらくそういう目的の為に作られた場所なのだ

ろう。厳しい軍の中にある数少ない息抜きの場、とでも言うべきか。

 まさかそこを自分が利用する事になるとは思いもしなかったが、単純に嬉しかった。他の人間達がそこ

で行なっているような事は期待できないし、する事もできないが。彼女にそういう場所で会いたいと言わ

れるだけで幸せだった。ようやく近付けたような気がする。

 単純で愚かな考えだが。俺も所詮は人間、単純にできている。複雑に見えるのも、その積み重ねでしか

ない。

 だがその事も今は嬉しかった。それはまだ人間として彼女と会える証だと思えたからだ。彼女がそう考

える事はないとしても、俺がそう思えれば充分だ。

 彼女も程無くしてやってきた。いつも通りの軍服姿だが、今までとはどこか違う。それが酷く嬉しく、

俺はどうしようもない感情に包まれるのを感じた。もうそれを現す術は持たなくとも、魂が昔のように震

えている。まるで人間そのものであるかのように。



「お疲れ様、CA1。いえ、・・・・と呼んだ方が良いかしら」

 第一声がそれだった。

 俺の心が別の意味で震えた。それが人間である証だと言うなら、なんという罪深い生き物なのだろう。

 それは紛れもない俺の名前。いや、俺だった肉体の名前。今は自分自身ですら忘れていた名前。正直彼

女が憶えている事すら意外だった。

「・・・・・・」

 何も返答する事ができない。話せなかったというよりも、嫌だったのだ。別の何者かの声で答える事が。

 CA1として生きてきて、初めてその事に違和感を覚えた。俺はCA1から切り離されたように感じ、全てが

疎ましくさえ思えてきた。

「初めて聞かされた時は信じられなかった。でも全て知らされた時は受け容れるしかなかった。難しかっ

たけど・・・・、そうするしかなかった。だって、今更どうしようもないもの・・・」

 あの表情と態度は、そこからきていたのか。受け容れられないから、拒絶するしか、遠ざけるしかなか

ったのか。

 そして受け容れたから、今こうして会う事ができたのか。

 とすれば、それはどういう意味なのだろう。

「何でそんな事をしたの」

「・・・・・・・・」

 今度はどう話すべきかを迷った。話す話さないではない。彼女がこうしている以上、はぐらかせる訳も

ないし。嘘をつけば、彼女は俺を一生許さないだろう。

 彼女の言葉にはあたたかい心だけが見える。CA1の分析にもそう現れている。裏切る訳にはいかない。

「・・・・・・・護りたかった。いや、違う。何かしたかったんだ、もう一度、自分の足で」

 機械音声のまま胸の内にあったものを全て語った。人形使いが人形に喋らせているようで酷く不恰好、

違和感のあるやり方だったが、今の俺にはそうする事しかできなかった。

 本当の声は失われてしまった。例え真似たとしても、それは俺の声ではない。

 だから同じ事だ。今は素直に心の内を話すしかなかった。それだけが見せられる誠意の全て。彼女の心

に、届いてくれればいいが・・・。

 彼女は最後まで黙って俺の話を聞いてくれた。短い話だったと思うが、何を話したかは憶えていない。

CA1にも記録させていない。ここに入った時から、何も残さないと決めている。

 それから名残惜しむように彼女を見続けた。

 向かい合わせではなく隣に並んで座っているが、彼女の姿ははっきり見える。その目は泣いていた。涙

は見えないが、確かに泣いている。昔見た泣き顔にそっくりだ。嫌でも解ってしまう。

 人間と同じ視界なら隠す事もできたのに、CA1はそこにあるもの全てを映し、分析する。決して逃れら

れない。冷静に導き出される答えから、逃げる事ができない。

 今更ながらその事の重さに気付き、絶望した。嘘がつけない、嘘を信じられないという事は、なんて悲

しい事なのだろうと。

「・・・・・・」

 全てを話し終えた時、彼女は目を閉じていた。そうする事で流れ落ちてくるものを防ごうとしたのか、

単に考えをまとめていたのか。

「・・・・だからって、なんでそんな事したの。他のやり方があったと思う。だって貴方は失くしたのよ。

全てを失ったの。あるべき未来も、隣に居るべき人も、産まれて来るはずの子供も、そのまた子供達も。

全部失ったのよ。・・・引き換えに何を得たの。貴方は一体何を得たと言うの」

 唇から染み出すようにもれたその声が俺の心を一瞬で冷めさせた。

 思い知らされた。

 人を捨てるという事は、人として生きる全ての可能性を捨てる事と思い知らされたのだ。俺がいつまで

も求め、これからも報われなく求め続けるだろう人に。

 そして彼女はCA1に抱き付く。それはまるでしがみつくように酷く不恰好で、俺からでさえあわれんで見

えた。俺ではなく、彼女がそう見えるのだ。何一つ救いが無いせいで。

「こうして抱きしめる事さえできない。ぬくもりも心も感じる事ができない。貴方はもう、私とは何も共

有する事ができないの。私は貴方でさえいてくれるなら、それで良かった。頑張ってくれているなら、そ

れでよかったのに。・・・・こんな事に何の意味があったの。貴方は人として、人の望みを叶えたかった

んじゃないの。なのに、なんで全部捨てたのよ。・・・・・だから私は」

 彼女の目から涙がこぼれる。

 そして立ち上がり、背を向けた。

「だから私は、決意するしかなかった。人は人しか、愛せないの。・・・・・愛せないのよ」

 俺もそれを見送る事しかできない。

 いや、見てさえいなかった。

 何も命じる事ができない。

 ただ流れ、映像が流れ、正確に音声が再生される。CA1は俺の命令を促す為、助ける為、何度も何度も状

況を整理して俺に知らせる。それは俺の脳に直接流れる。逃れる事は不可能だ。

 彼女の言葉自体もそう。人の耳で聞くよりも、遥かに正確で無慈悲に入ってくる。修正はされない。俺

の脳が一番受け取りやすい、変える必要の無い言葉で、俺の脳に直接送られる。

 拒む事も、逃げる事もできず。延々と続く。

 こんなものが、俺の望んだ結果だと言うのか。

 こんな事が、彼女との結末なのか。

 俺にできた事は機能を一時停止し、休眠状態に入る事だけだった。

 そしてCA1は素直にそれを実行する。

 彼は俺に忠実だ。



 戦争は終わり、全て解決した。彼女も木崎少佐と結ばれ、幸せの象徴として祭り上げられた。

 我が国には勝利の声が満ち、CA1も英雄として迎えられ、勝利した全ての敵国から納められた賠償金は

天文学的な金額に及んだが、その大部分はCA1の量産化に注がれた。

 量産機の名はCA2。

 頭脳には俺の脳が今までCA1として行動してきたデータから作られた、擬似脳とでもいうべきプログラ

ムが詰め込まれている。

 そして彼らに直接命を下すのは、唯一つの生身の頭脳であるこの俺だ。

 独立した専用回線によって結ばれ、命令一つで全てのCA2を動かせる。

 それを脅威に感じたのか、安全装置とでもいうべきものも脳に付けられた。もし俺が反乱を起こせば、

ボタン一つで爆発して終わり。命令する者を失えば、CA2も無力化する。

 所詮俺の使い魔に過ぎない。

 でも例えそんなものがなくても、俺は決してそれを望まない。

 俺の役目は絶対者になる事ではなく、回線網の中心になる事だ。それ以上ではない。俺は支配者でも、

神でもない、ありふれた人間達のできそこないである。

 望むものを全て捨てた、愚かなできそこない。いや、それがまさに人間か。

 俺の望みは達せらている。彼女はああ言っていたが、確かに望みを達していた。俺は護ったのだ。

彼女を、そして彼女の住むこの国を。

 俺は全てを捨てた。可能性も、愛も、ぬくもり、希望さえも。

 しかし望みは達した。何もできなかった肉体を捨て、この機械の体を、いや俺自身が機械の一部になる

事で、目的は達せられたのだ。

 俺が人間のままであったなら、誰かに愛されていたのかもしれない。その相手が彼女ではなかったとし

ても、俺を俺としてありのまま受け容れてくれる人はいたかもしれない。

 もし居なくとも、あれはあれで幸せだったと今は思う。安全な場所で、不遇な体でも、血を見ずに済ん

だ。それは幸せな暮らしだったのだろう。同僚も気のいい人達ばかりだったし、あの頃の俺は決して不幸

なだけではなかった。

 だが俺はその全てを捨てた。愚かと言われれば否定できない。

 でもそうしなければ、この国を護れただろうか。俺達は今のように生きていられただろうか。彼女を護

れただろうか。

 違うと思う。俺の望みは、俺自身を捨てる事で初めて叶(かな)う。

 その代償が機械としての生だとしてもかまわない。人でなくなっても、例え愛が愛として達せられなく

とも、彼女を永遠に失ったとしても、可能性を失ったとしても、かまわない。

 もしやり直せたとしても、俺は同じ道を選ぶだろう。

 俺は選択する事ができた。この未来は確かに俺が俺の手で作り出したものだ。他の誰でもない。この勝

利も代償も、俺が俺だけで得た。誰でもない、俺自身が選択し、手に入れたもの。

 彼女は、いや多分俺自身も勘違いしていた。

 求めていたのは愛ではない。彼女の肉体ですらない。俺が求めていたのは、俺自身で選択する事。そし

てその為の力を得る事。

 後はその代償を死に果てるまで支払い続けるだけだ。

 俺は最後まで護ってみせる。彼女が住むこの国を、人生を、必ず護ってみせる。歴史は繰り返し、再び

戦争が起こるとしても、俺が必ず護ってみせる。

 人の脳だけのできそこないのこの俺が、人を捨てた機械の俺が、全ての大事なものを護ってみせる。

 そう、俺はそういう選択をしたのだ。

 CA1という新しい生を。俺だけの理由で。

 ならば喜ぼう。

 例えこれが罰だとしても、望みは叶ったのだから。

 それが俺の愛。不恰好で、誰よりも醜い、今の俺に相応しい、俺だけの愛。

 理解など初めから不要。これは俺だけのモノ。俺だけの心。誰にも、何も関係ない。俺はただ望むまま

に生きる。

 これからも、今までも。



 CA1は様々な薬品を投与されながら、予想を大きく超えてその後何十年と生きた。

 彼の護るべき生命が、次に護れる者に託されるまで、彼は独りで戦ったのである。誰にも知られず、誰

にも理解されないまま。

 しかしそれで当然なのだろう。彼もまた理解しなかった。結局自分だけの為に生き、自分の為に死んだ

のであり。だからこそ悔いは無かったとしても、誰かに理解される理由などどこにもなかったのだ。

 彼は人知れず処分されたが、データに変えられてその遺志は残された。

 そしてまた一人、愚か者が契約を結ぶ。全てと引き換えにして、未来を選択できるだけの力を。何者も

退ける、無敵の力を得る。

 CA3と呼ばれたそれも、長く世界を支配した。CA1とは別のやり方で。

 その選択がどうであったのかは、どうでも良い事だ。これ以上語る必要も無い。

 人は誰かの望みの為に生かされるのだから、その望みが誰のものであれ、同じ事。

 同じ道をたどり、同じ場所へ行き着く。

 どんな人間にも等しく死が与えられる。何も変わらない。所詮、人は人。何か一部でも残っている限り、

人は人でしかない。そしてそこから生まれたものも人でしかない。

 即ちそれが人であるという事。人である意味。

 だから終わらない。いつまでも繰り返す。

 人は人のまま、いつまでも変わらないのだろう。


                                                      永続




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