明日さんと昨日くん

 明日さんが熱を出してしまいました。

 うんうん言って寝込んでいます。

 おかげでずっと今日でした。

 何故なら皆明日になりたくなかったからです。

 明日になると寝込んでしまうから。


 昨日くんが熱を出してしまいました。

 ですけど皆気にしませんでした。

 何故ならもう関係無いから。


 昨日くんはうんうん唸りながら言いました。

「何故皆お見舞いに来てくれないの?」

 今日の皆は言いました。

「昨日の辛さは覚えていても、もう実感出来ないからだよ」

 昨日くんはまた聞きました。

「だったら明日さんの事だって解らないじゃないか」

 今日の皆は答えました。

「過ぎた事はもう二度と会う事は無いけど、明日来る事は恐いじゃないか。だから、早く元気になってほしいじゃないか」


 

 明日さんが元気に現れました。

 今日の皆が祝福しました。

 昨日くんが元気に現れました。

 でも誰も気にしませんでした。


 昨日くんは泣きながら言いました。

「何で皆何も言ってくれないの?」

 皆で言いました。

「昨日より明日の方が心配なのさ」

 見かねた今日の一人が言いました。

「昨日くん、僕は君が治ってくれて嬉しいよ。昨日だからって心配だよ」

 すると他の皆はそれを見て

「あっ、あいつ後ろ向きな奴だ。済んだ事を気にするなんて女々しい奴だ」

 とはやし立てました。

 今日の一人はキッとして言いました。

「お前らだって本心は気にしてるくせに!!」

 それから昨日くんに言いました。

「誰だって昨日の辛い事は気にしたくないんだよ。でも本当は心配してるんだよ。それに見てごらん。

あそこにずっと君を見てくれている娘がいるよ」

 昨日くんがそちらを見てみると。

 一昨日さんが心配そうに見詰めて居ました。

 そんなお話し。



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