まつぼっくり

 まつぼっくりが歩いていました。

「はあ・・・・・・」  

まつぼっくりは溜息ばかりついていました。  

溜息をつきつつ、林を抜けていくと。  

足の動かない狼さんが居ました。

「まつぼくりくん、どうしたんだい?」  

狼さんは不思議そうに聞きました。

「僕、かさが開ききるとはじけちゃうんです」  

まつぼっくりは哀しそうに答えました。  

狼さんは言いました。

「良いじゃないか。自由に動けるんだから」  

林を抜け、道なりに進むと。  

おなかをすかせたコオロギさんが居ました。

「どうした?まつぼくり」  

コオロギさんは面倒くさそうに聞きました。

「僕、もうすぐはじけちゃうんだ」  

まつぼっくりは泣きそうな声で言いました。  

コオロギさんは言いました。

「良いじゃない。おなかすかないんだから」  

道なりに進むと海に出ました。  

ぷかぷか浮いて沈むと。  

鏡を見て嘆いているオコゼさんが居ました。

「どうしたの、まつぼくりさん」  

オコゼさんは心配そうに聞きました。

「僕、はじけちゃうんです」  

まつぼっくりは諦めたように呟きました。  

オコゼさんは言いました。

「良いじゃないですか。顔見て笑われないのですから」  

ぷっかり浮いて波に身を任せていると、森に流れ着きました。  

森の中を進んで行くと。  

眼鏡をかけた梟さんが居ました。

「どうしたのかね?まつぼくり君」  

梟さんは興味を示して聞きました。

「はじけそうなんです。でも、誰も僕の辛さを解ってくれない」  

   まつぼっくりはなげやりに叫びました。  

   梟さんは言いました。  

  「じゃあ、君は誰かの辛さが解るのかね?」  

   まつぼっくりは考えました。  

   僕だけが辛い訳じゃない。出来ない事を嘆くより、出来る事に感謝して一生懸命やった方がお得だと。  

   そして皆に聴こえるように大声で。  

  「僕はまつぼくりじゃない。まつぼっくりだ!!」  

   そんなお話し。



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