戦場のオオカミ・・・・
食卓・・・・それは兄弟の争いの場である。
平穏、団欒の場。否、それは一人っ子の戯言であろう。
今日も今日とて比類なき戦いが繰り広げられるのだ!
本日のメインはカレーコロッケである。たかがコロッケと侮るなかれ、カレーと新じゃがの華麗なるハーモニーは安い肉など軽く凌駕してしまうのである!
おそるべし、カレーコロッケ!!
食の恨みに勝るもの無し!!
この家庭の食事は一家揃った所で始まる。祖父母、両親、子供三人の七人家族。
そして次々と料理が運ばれていく。
部活帰りの長兄などはこの匂いで涎が溢れてる事だろう。
長女、次女も良い物には敏感である。このカレーコロッケが稀に見る逸材だと言う事はすでに気付いてる事だろう。
そうして、お皿が並んだ所で「いただきます」のゴングが鳴る。
まずは長兄、歳の功の威厳を見せる。一睨みで、妹達の手が鈍る。
長兄は乾いた笑いを漏らしながら、一つ一つ自分の皿へ取っていく。
やはり長兄強し!されど、妹達に一個ずつ残す所がまた心憎い演出であろう。
妹達に甘い両親への牽制でもある事は言うまでも無い。
流石は長兄、十数年の戦歴は伊達では無かった。
勝利!!その二文字が長兄の頭上に神々しくも輝いているのである。
そうして、ゆっくりと食べながらも、そのほとんどは最後のお楽しみとして残しておく事も忘れない。
そうして、夕食も佳境を過ぎ去り。このまま終わるかに見えた。
されど、大いなる皮肉かな。天の悪戯なのか。
次女がぽつりともらした・・・・。
「コロッケがもっと欲しい・・」と・・・。
長兄は意に介し無かった。何を言ってるんだ、この妹め!と。
しかし、この数瞬後・・・戦慄におののく事となる。
母親、曰く。
「お兄ちゃんなんだから、この子にあげなさい」
ああ、無常なるかな日本の食卓。
長兄とは言え、所詮は養ってもらっているに過ぎないのである・・・。
こうして、長兄は深い傷を負ってしまうのである・・・。
どれほどの事であれ、たった一言で終わってしまう事もある。
ああ、哀しいかな人の生。
奢った長兄は自ら破滅の道を選んだのである。
彼、曰く。
「さっさと食べときゃ良かった・・・・・・」
そんなお話し。
EXIT