私が悪魔だったら


 私が悪魔だったら、初めからこんな世界に興味を持たない。

 破壊、破滅、絶望。そんなものなら腐るほど転がっている。

 もしそれを食らい、力としているとしても、もうお腹一杯で、これ以上要らない。

 私が悪魔だったら、何一つしないだろう。

 誰かの為になる事も、為にならない事も、何一つしない。

 悪魔らしく怠惰(たいだ)に眺めている。

 溢れる程の凄惨な光景を食らいながら、それが新たに生まれるのを見る。さぞ楽しい事だろう。

 何もしなくていい。もうそこに転がっている。

 人間は人間であるだけでいい見世物なのだ。

 何もする必要はない。

 私が悪魔だったら、何も願わない、何も思わない、それ以上求めない。

 悪魔は貪欲。でもきっと、人の方がもっと貪欲。

 それに悪魔は勤労ではない。

 だからきっと、何もせずに眺めている。楽しそうに、或いは飽きたように。

 たまには違った光景が見たいと思うかもしれない。

 でも悪魔は知っている。何をしたとしても、結局人のやる事に変化は無い事を。成長も退化もしない。人は

人の行いを続ける。永遠に。

 人は人であるだけで悪なのだから、悪魔が触れる理由はない。

 悪魔は決して自分以上には働かない。面倒な事は一切しない。

 だから私が悪魔になっても、何も変わらない。むしろ人であった時よりは無害だ。

 私が悪魔だったら、何もしない。

 私が悪魔だったら、寝て見ている。

 何もする必要がない。いつまでもそうしているだけでいい。

 神とも争わない。

 悪魔とも争わない。

 まして、人になんか関わらない。

 誰よりも、きっと。




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