大きな人が大きな手で木に降り積もった雪を一本一本丁寧に落としていきます。 でも全てを払い落とすのではありません。重くなり過ぎて枝が折れない程度に落としていくのです。 大きな人はこの光に輝く銀世界が何よりも好きでした。 だから全部落としてしまうと、とても寂しくなるのです。 大きな人は芸術家でもありました。光の加減を計算して、雪に一番美しい厚みと角度を付けていくのです。 あの美しさは自然に生まれるものではありません。この大きな人がそうなるように一生懸命落としている のです。 世界の端から端まで、どこに行っても美しい雪景色が見られるように。 冬の厳しさを少しでも忘れてもらおう、という想いもあります。 確かに冬は厳しく生活し難いですが、良い事も沢山あります。美しいものが沢山あります。大きな人は冬 という季節が好きでした。だから多くの人に好きになって欲しいと思い、雪細工を始めたのです。 誰も大きな人の事は知りませんが、その作品の美しさは誰が見ても解ります。 雪に覆われた木々の群れ、或いは河川の側、雪が積もったそこに天から差す光をいっぱいに浴びた光景は、 何よりも美しく輝いています。 まるで雪そのものが光り輝くかのように、それそのものが光であるかのように、全てを照らすように光で 埋めていきます。 大きな人は、それを見て浮かぶ驚きと喜びの表情を見て、独り大きく満足しているのです。 そうして今日もまた、大きな人は世界中を光に満たしていくのです。
おしまい。 |