第七坂出丸航行中!


 第七坂出丸は今日も行く。

「船長、大きな雲が出ております。あれは入道雲です」

 船員の一人、逆モヒカンのサブが天を指差す。

「それで?」

「それだけであります」

「うむ、よろしい」

 船長は豊かな髭の中でパイプをくもらし、何となしに頷いた。

 苦節35年、万事この調子でやってきた。これからもそれは変わる事が無いだろう。ただ、惜しむら

くは一つ敵わぬ夢がある。

「嫁が欲しい・・・・」

 第七坂出丸はともかく、今日も行ったのだ!

 何処へ、とは聞かないで欲しい。

 それが大人の事情なのだ!!



 第七坂出丸(概ねフランス製)は雨中でも行く。

「船長、船長!」

「何だね、モフリン航海士」

 船長は髭の中でスルメをくもらせながら振り返る。

「船長、巨大わにと出くわしました」

「それで?」

「美味そうであります。かまぼこにしてもいいでありますか?」

「うむ、よろしい」

 ちなみにわにとは山陰地方では鮫の事である。

 そして只今ブラジル付近を航海中であった。

 雨がどう関係あるのかなんて聞かないで欲しい。

 それが、粋なのだ!!



 第七坂出丸は嵐も行く!

「艦長、砲撃準備完了致しました」

「うむ、砲撃開始」

 大砲群が火を噴いていく。轟音盛大、今季限定サービスなのだ!

「艦長、おかげですっきり致しました」

「うむ、わしも」

 いつから艦長かなんて聞かないで欲しい。

 人間常に変革を迎えているのだ!!



 第七坂出丸(一部モンゴル製)は静かに停船中なのである。

「船長、暇ですね」

「うむ、ならばここで一句」

 船長は筆と俳句札をもったいぶって取り出した。いつもこれはかかせないのである。

「人生は 浮かび浮かれる 帆掛け舟  行くも返るも 風の吹くまま」

「風流ですね。しかし船長この船は帆船ではありません」

「うむ、では帆掛け舟を帆無し船に変えよう」

「船長、お見事です」

「ふむ」

 だからどうしたとは聞かないで欲しい。

 人生そんな時もあるのだ!!



 第七坂出丸寄港!!

 なんでこんなに中途半端なんだとは言わないで欲しい。

 そろそろ満足したのだ!!!

 好きに生き、好きに書くべきなのだ┓(´_`)┏.


 

 そんなお話なのだ!!



                             了




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