遠雷


 ふと感じる、この波打つような想いは、例えれば遠雷に似ている。

 雷光が世界を統べ、それから音という波動が届くまでの間、その間に感じる例えようがない恐怖心。

 近いのか遠いのか、大きいのか小さいのか。

 その音が遠いとしても、まだ安心は出来ない。

 今は遠いが、いずれ来るのではないか。徐々に近付いているのではないか。

 今日は来なくても、明日来るのではないのか。

 近ければ離れるだけだが、遠ければ常に近付いてくる可能性がある。

 雷鳴は気まぐれ、人の思うようには流れない。

 いや、意志があるのかもしれない。でなければおかしい。

 近付いて来ないというのならば、何故私にこの音を届ける必要があるのだ。光を見せる必要があるのか。

 光は警告、音は処罰。今はまだ、必ず来るだろうその時に、その光音は似ている。

 私の心にふと過ぎるそれは、訪れては去って行く遠雷のようなもの。

 遠からず、近からず、私に示唆する、償いなのだろうか。




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