影法師


 夕闇に、どこまでも伸びる影法師。

 朱に染まる世界の中で、いつまでも黒い。

 しっかりとした色のままで、もう一人の自分を形作る。

 腕を伸ばし、足を伸ばし、何倍にも伸びた影が、明日の自分を見せてくれる。

 明日はきっとこれくらい大きな人になれている。

 そしてもっとずっと優しくなれている。

 そうなればいいと思いながら、影を伸ばす。

 夕闇は優しい。光が光でないままに、夜を優しく支えている。

 逃げないで、ずっとその場で。

 飽きてきたら帰るといい。

 でもそれまではのんびりと、たまには何も言わず、何も思わず、ただそこに居たって良いだろう。

 何の理由もいらない。

 そこに誰かと居たいのなら、そうすればいい。

 それはきっと、素敵な事なのだから。




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