枯れ果てた木


 一本の枯れた木。何も残っていない。真っ白な世界で唯一つ枯れ果てている木。

 白黒の盲目の中、誇り高そうに、寂しそうにぽつんと立っている。

 何の意味も無く。そこに残されただけの全てから外れてしまった一本の木。

 雄雄しくもあったその存在はもう見向きもされず。

 いつかは真っ白な白黒の世界に取り込まれ、消え果てるだろう木。

 情熱は無く。力は無く。在るのは諦めと徒労。

 枯れた木が見る世界は、例えどんなに色付いていたとしても、常にくすんでいる。

 何も関係が無い。もう過ぎ去った世界だとでも告げるように。

 それでもまだ生きているのは、それを望まないという事なのだろうか。

 解らない。

 だからこそ枯れ果てたのかもしれない。




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