霧咲き眠る頃


 夢の世界というものは、霧の中に居る自分であるかのように思える。

 全てを自分で創り出しているのに、自分では何も解らない。どうなるのか、どうなっているのか、どうなっていく

のか、何も解らない。

 その一瞬一瞬が全てであり、時間も空間も関係ない。過去も未来も同じ現在であり、何の脈絡もないくせに何かは

伝わってくる。その時の心を痛いほどに思い出す。

 時間の無い世界に似ているのかもしれない。

 過去から未来への流れがない世界はいつもその瞬間が際立っているはずである。

 しかしそれも現実の世界と変わらないのかもしれない。

 我々もまた瞬間瞬間を生きていて、それ以外の時間に触れる事はできない。思い出として過去と向き合う事はでき

ても、その時間を体験する事は二度とできない。未来など想像することさえできない。

 我々の生きる世界もまた、切り取られた瞬間の世界なのだ。

 それをただ動画のコマのように並べられているに過ぎない。

 我々の生もまた命の錯覚で絶えず流れ続けているように思えているだけなのかもしれない。

 生きているように思わされているだけに過ぎない。

 それとも生と時間は本来無関係なのだろうか。

 その問いもまた霧に包まれている。




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