メロンは昔、今のようにあみあみではなく、全体的につるっとしておりました。そして皆そのつるつるお肌を羨ま しがっていたのです。 つぶつぶ肌のイチゴは特にメロンへの憧れが強く、いつも見ては溜息をもらしておりました。 自分もああなりたい。なんで自分の身体はこんなにつぶつぶしてるのだろう。手で撫でてもざらざらしてて気持ち よくありませんし、ちょっと力を入れただけでつぶれてしまいます。 色も青白く、つぶつぶヒョロリ、つぶつぶヒョロリとからかわれる事ばかり。いつもつるつるすまし顔のメロンの ようになりたいとずっと思っておりました。 でも実はメロンの方もイチゴに憧れていたのです。 こんな青白い肌に何もないのっぺりつるつるした肌。何かを乗せてもつるりと滑り落ちてしまう。せっかくの丈夫 な皮もこれでは役に立ちません。 それに比べてイチゴの柔らかくてつぶつぶした肌。なんてかわいいのでしょう。自分なんかとは大違い。 メロンはイチゴを見ては、いつも悲しくなったものでした。 そんな二人がひょんな事で二人きりになる機会がありました。 イチゴはさっそくどうすればメロンのようになれるのか、その秘訣を聞こうとします。丈夫でつるつるしたそのお 肌になる為にはどうすればいいのかと。 しかしそんなイチゴにメロンは逆に問い返しました。どうすればそんなつぶつぶふっくらしたお肌になれるのかと。 イチゴはビックリしましたが、メロンはとても真面目な顔をしています。冗談で言っているようには思えません。 それに憧れのメロンがこんなにも熱心に自分の話を聞いてくれ、誉めてくれるのですっかり舞い上がってしまったの です。 イチゴは一生懸命考えました。 よく解らないですが、とにかく考えました。 じっと考えた末に気が付いたのは、イチゴとメロンの違いです。 一番大きな違いはメロンの丈夫でつるつるした皮。これがある限り、きっとメロンはメロンのままでしょう。 でももしこの皮をどうにかできれば、例えばヒビでも入れる事ができたら、そこから綺麗に割れて中の柔らかい果 肉が出てきてくれるかもしれません。 そしてイチゴははがれた皮を自分の物にしたいとも思いました。メロンのつるつるした皮を身につければ、きっと イチゴも今のメロンのようになれるでしょう。 勿論、本心なんかは口に出しません。メロンの方も何も言いませんでした。 そして二人で皮を破る方法を一生懸命考え、一つだけその方法を見付けました。 果肉をふくらませ、その力で内側から皮を破るのです。さすがの皮も内側までは強くないと思ったのです。 膨らませるといえば空気が必要になります。空気を中に入れて一気にふくらませ、パチンと皮を破るのです。 メロンには口がありませんので、イチゴが空気入れを使って無理矢理入れてしまう事にしました。空気入れを挿す 為に小さな穴まであけて、ついでに裂けやすいように皮全体に切れ目を入れてしまいました。 イチゴはちょっと心配しましたが、メロンは痛くも痒くもなかったようです。 後はふくらませるだけです。 イチゴは必死に頑張りました。成功して皮が手に入れば、皆がうらやましがるつるつるお肌を手に入れる事ができ ます。顔を真っ赤にして頑張って空気を入れました。 メロンはみるみるふくらみ、パーンという破裂音を立てて皮は切れ目に沿って綺麗にさけてしまいました。全身く まなく裂け、裂け目から柔らかい果肉がのぞいています。 二人は嬉しくて嬉しくて抱き合って喜びました。 でも上手くいったのはそこまででした。確かに皮はさけましたが、それ以上取り外す事はできません。皮はしっか りと果肉にくっついて離れないのです。 イチゴはまた顔を真っ赤にして引っ張りましたが、一枚もはがす事はできませんでした。 メロンも残念でしたが、割れ目から柔らかい果肉が見えているので、まあ前よりはましだと思い直し、二人はそれ ぞれ家に戻ったのです。 そして次の日。 メロンは自分の姿を見て、わなわなとふるえました。 綺麗にさけていた割れ目はくっついた皮で全て埋まり、埋まった割れ目は太く堅く盛り上がっていたのです。 つるつるした肌は見るかげもなく、メロンの肌は網目のようにざらざらになってしまっておりました。 イチゴの方もあまりにも頑張り過ぎたせいか、真っ赤になった顔が元の色に戻りません。 二人とも恥ずかしくなって、大きな葉っぱで自分の身体を隠したという事です。
そんなお話。 |