めるふぇん遊戯


 ある時代ある所にオハギくんがおりました。

「今日もあまあまだぜえ、小豆も弾けてるぜ」

 程好い甘味でコクもあり、それはそれは大層なオハギでした。

「へい、俺の方があまあまだぜ、ちきしょうめ」

 そこへ現れたのがゼンザイくん。

 正に甘さ大爆発と言う感じでございました。

「ヘイ、オハギ。お前も俺のモノになればいいのさ、ハハン」

 何と言う事でしょうか。ゼンザイくんはいきなりオハギくんを掴んだかと思うと、自分の御椀の中へ

と導いてしまいました。

「オウ、アウチッ!俺の身体がゼンザイに蕩けていくうううううう」

 暖かいゼンザイに包まれて、オハギくんの身体が蕩けてしまいます。何とした事か、実は二人の成分

は一緒だったのです。

「ふはははっはは、俺と一つに溶け合うのだオハギボーイ、ハハン」

「あああああああ〜」

 オハギくんの小豆は少しずつ剥ぎ取られて行き、白い素肌が覗き始めております。このまま裸になれ

ばゼンザイくんの思う壺、オハギとしてのあいでんてぃてぃも剥奪され、ただの御餅としてゼンザイの

中で過ごしてしまうでしょう。

「溶ける、溶けてしまうううう〜」

 すでに汁に浸かった下半身の小豆はすべて剥ぎ取られ、ゼンザイの御餅とねとねともちもち絡み合う

ように侵蝕されて行きます。

「オウ、ミステイクッ!」

 すでに単なる御餅となったオハギくんの下半身はゼンザイくんの御餅と一体化し、単なるゼンザイと

して生きております。

「フハハハハッハ、ゼンザイと化すがいいさ。お前も所詮餅は餅なのさ、ハハン」

 ゼンザイくんは勝ち誇ったようにアメリカン高笑い。

 そこへ現れたのがアンミツちゃん。

「キャー、お下品よお下品よ、二餅共・・。こんな公衆の面前で溶け合うなんて」

 しかしその目は顔を覆う掌の指の間からしっかりと見開かれておりました。

「そうだよ、二餅共。恥じを知れ」

 通りがかりのミタラシくんも観ていられずに思わず声をかけます。

「ヘイ、二和菓子共。二餅の問題に口を出さないでくれ、所詮団子とデザートには解らないのさ、ハハ

ン」

 ゼンザイくんは構わず、オハギくんを取り込んでいきます。

「ああ〜、俺があ・・俺がゼンザイにぃぃぃぃぃぃぃっ・・・」

 とろみ汁がすでに全身に回っていて、小豆ももうほとんど残っておりません。

「このまま俺はゼンザイに取り込まれてしまうのか・・・・」

「オハギく〜〜〜ん!!」

 アンミツちゃんの叫びも虚しく響くだけ。

 オハギくんはネットリと溶け合いながら、汁の中に取り込まれて逝きました。

「フハハハハハハ、すっきりしたぜ。これで一餅だけさ、ハハン」

「せめて・・・・ゼンザイでなく、ゾウニだったら・・・」

 ミタラシくんも流石に目を覆ってしまいました。

「そうよ、ゼンザイがゾウニだったら、こんなお下品な事にはならなかったのよ。こうなれば、ゼンザ

イの小豆を全部食べてやるからッ。踏んづけてやるっ!」

 アンミツちゃんは早速小豆を捕食し始めました。一粒一粒丁寧に掬い取っていきます。

「オオウ、アンミツガール。そんなはしたない真似は止めるんだッ!」

 ゼンザイくんは身悶えながら、苦しそうに細く息を吐きます。

「くはッ、こうなればお前も取り込んでやる。団子も餅になればいいのさ、ハハン」

「うわわわわわッ」

 何と言う事が重なるのでしょうか。ミタラシくんは串を引き抜かれ、あれよあれよと言う間にゼンザ

イくんの御椀の中へと導かれてしまいました。

「ああっ、タレと汁が合わさって更にあまあまにぃ〜〜」

 あまあま度を分析しながら、ミタラシくんはゆっくりとお餅へと姿を変えました。

「イヤッ、不潔だわ。ミタラシ団子とゼンザイが合わさるなんて、不潔不潔よ〜〜」

 アンミツちゃんは戦意を喪失して駆け出してしまいました。小豆を身体に残しながら・・・・。

「ふははははは、これであいつも餡に取り付かれるのさ、ハハン」

 ゼンザイくんはほくそ笑みながら、アンミツちゃんの変化を楽しみに日々餡子具合を観察する事にし

ました。ですが、ゼンザイくんもタレゼンザイへの自分の変化も気付いていなかったのであります。

 タレゼンザイの名を聞かないという事は、もしかしたらすでに・・・・・・・フフフフフ。

 そんなお話し。


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