瑞々しい言葉達


 言葉は果実のよう。

 出てくる時は瑞々しく、その香りがぱっと広がる。

 人の心に入り、心地良く響く。

 文章もそう。

 その瞬間閃いた言葉は雷光のように自分の心を打ち、どっぷり酔わせてしまう。

 しかしそれも時が経てば瞬時に朽ち。

 枯れ落ちて、みすぼらしいものに変わる。

 朽ちた言葉は時代遅れのように間の抜けたものに聞こえ。

 朽ちた文章には恥ずかしさと後悔が残る。

 そこにあるものは何一つ変わっていない。

 同じものであるはずなのに、初めから異なったものであったかのように感じ取れてしまう。

 言葉は魔法だ。人の心を絶え間なく揺り動かし。

 良くも悪くも無数の衝動を生む。

 その衝動が鼓動となり。

 楽しみにも哀しみにもなる。

 だが過ぎ去れば、空虚にしか残らない。

 所詮人の心だけの、現実には存在しないものだと嘲笑うかのように。

 文章は名酒のように人を酔わせる。

 真理を得たかと錯覚させる。

 だが過ぎ去れば、消し去りたい過去に変わる。

 若い時に体験した、苦い思い出を一つ一つ告げられるかのように。

 瑞々しい言葉達。

 人に深く影響を与えるが故に。

 毒にも薬にもなる。

 そして大抵が毒に終わる。




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