重くて大きな穴


 重くて大きな穴を見付けた。

 おかしな表現だが、本当だ。あまりにも重過ぎるせいで自分の重さで沈んでしまい、穴になってしまったと

いう穴だ。

 重過ぎるから、今もどんどん深く、大きく広がっている。

 このままだとこの星全てを穴にしてしまうかもしれない。

 穴を空けるのではなく、穴にしてしまう。

 全てが穴になり、空けられる物が無くなったら、そこは穴と言えるのだろうか。

 何も無い重さだけの空間。それはどういうものだろう。

 空間そのものに穴を空けてしまうのかもしれない。

 そうしてまたどんどん深く大きくなって、全ての空間を穴にしてしまうのだろう。

 その時はどうなる。

 無か。

 一切の無になるのか。

 でも何も無いという事はありえない。

 この世の全てが釣り合うようにできているのなら、何も無いという事はありえない。

 極端な事はありえないのだから。

 なら重過ぎた穴がひっくりかえり、全てになるのかもしれない。

 何も無い穴がひっくり返って、そこにあった全てに変わる。

 無の反対が有だとすれば、そうなる。

 でも本当にそうなのか。

 何も無いという事が有るのだと考えたら、それで釣り合いはとれていたのかもしれない。

 無が有る。これもおかしな言い方だが、本当だ。そうなっても不思議はない。

 それともこの穴はいつかどこかに繋がるのだろうか。

 別の場所と繋がって、穴としての役割を続けようとするのだろうか。

 どこかに出れば、それ以上掘る必要はなくなる。

 有の中にある無が穴。

 穴で居続けたいのなら、永遠に空き続ける訳にはいかない。どこかで終わりを見付けなければ。

 それでも、穴である事を、自分である事を捨ててまでそこへ向かうのだとしたら、それこそが穴の一生とい

うものなのかもしれない。

 生まれれば死へ向かう。

 そう考えれば穴である自分を消滅させる為に続けてもおかしくない。

 それが生きるという事なら、不思議はない。

 この穴も私達と同じ。

 永遠に活動を続ける。生きようとする。例えそれが死へ向かう事であっても。

 それは自分の意志ではないのかもしれない。でも結局は誰もが死へ向かい続ける。

 始まったものは終わらなければならない。

 そうとでも言うように。

 だとしたら、この穴はきっとそういう事なのだろう。

 永遠に自分の重さで沈み続ける穴。

 それこそが全てを終わりに導くのだと、私は知った。

 そしてこの穴こそ、私自身であると。




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