行き交う波が無数の波紋を呼び、その波紋が更に波紋を呼ぶ。 その上をすいすいと行き交い、ちりとりのような物でせっせと拾うのが私の仕事。 この海は人の世、行き交う波は人の生、生じる波紋は人の心。 その波紋の中から私達は必要の無い、或いは役割を終えたモノを選び、ゴミとして拾っている。 中には厄介な波紋があって、その波にこびりつくように絡まって取れないモノ、余りにも多くの波紋を新た に生んでしまうので取りきれないモノ、などがあります。 そういう場合はもう波を丸々切り取ってしまうしかありません。 そして追放するのです。この世から。 厄介なモノは根元から断ち切るに限ります。 人が自分でやってくれれば良いのですが、悲しい事に彼らはそれを自覚できません。ですから私達が取り除 くか、その人自身にこの世から居なくなってもらうしかないのです。 ただそこまでするのは大仕事になりますので、できる限りしたくありません。 仕事を増やしたくないからです。 ただでさえ人は悩みでできているかのような生命なのですから、これ以上仕事を増やされては堪りません。 ですから、私達は邪魔なだけの人間には容赦しません。 覚えておいて下さい。 決して忘れないで、そして一時でも多く健やかに楽しく生きてください。 そうすれば私達の仕事は減るのです。 人間が言っているように皆幸せになれたなら、私達の仕事は無くなります。 そしたら私達は何もしないで遊んでいられます。 だからお願いです。これ以上私達の仕事を増やさないで下さい。 少しでも幸せになって下さい。私達の仕事を減らす為に。 それがお互いの為になるのですから、良いでしょう。そうですよね、ねえ、そこの貴方。 |