種の起源


「おや、お珍しい。爬虫類タイプに進化させるおつもりですか?」

「やはり、無謀ですかね」

「ええ、体格的に難しいですからね。あまり数を増やせませんし、惑星の荒廃度も促進されますし、お

勧めは出来ませんね」

 白い空間にゆらりと浮かぶ二つの影。

 確かにそこに居るのに居ないような、そんな不思議な希薄感を持った影達。精神のみの存在、精神体

に進化した者達である。

 生きたいと願うだけで、何も摂取しなくても生きられる彼等は一つの進化の究極系なのかも知れない。

「その水系タイプの惑星だとやはり魚類がお勧めですね。陸地に生息させるよりは個体数を遥かに増や

せると思います」

「うーん、でも爬虫類が好きなのですけどね。ええと、何でしたか・・・・・そうそうドラゴンに似て

る感じで」

「なるほどなるほど、確かにそこから進化したドラゴノイドは強靭な肉体を持ってますし。どの環境に

も耐えられるでしょう。しかし、こんな水と森の惑星ではそこまで強い種を生み出す必要も無いでしょ

うに」

 彼らは目の前の青い球体のあちこちを覗きながら、先程から色々と議論し合っている。

「そうですね・・・、でも敢えてやってみたい気もするのですよ」

「はは、なるほど。拘りですか。でも、どのみちこれはもう失敗ですよ」

「ん、何故ですか?」

「見てください、この体格と凶暴性から言ってこの種が主進化を遂げるでしょうが。もうこの大きさは

この惑星の許容量を超えています。巨大化系統の進化を進めるには、この星は小さ過ぎるのですよ」

 一部拡大した部分に、荒れ狂う巨大生物達が喰らい合う姿が映し出されている。

 他の生物と比べてもその巨大さは圧倒的ですらあるが・・・。

「でも、これくらいなら何とかなりそうですけどね」

「いやいや、それで油断して収集がつかなくなってから後悔するケースが増えているのですよ。それに

ここまで圧倒的な力を一つの種が得るのも良い事でもありませんからね。基本的な力関係は均衡してい

た方がバランスは良いのですよ」

「そんなものですか・・・・・」

 勝利を収めた巨大生物の食い散らかしに、今は小さな生物達が群がっていた。 

「それに気温に弱いと言う欠陥もありますしね・・・・・。急激な環境変化に耐えられないのでは、す

ぐに死滅してしまいますよ。おそらく隕石でもぶつけて環境を変えれば、容易く絶滅してしまうでしょ

う」

「うーん、では止めにします。今回は爬虫類系は諦めましょう」

「ええ、それが良いですよ。それでどうしますか?」

「んーと、取り合えず隕石ぶつけて一掃します。後は変化した環境を生き延びる事の出来た一番しぶと

そうな種を主進化させていこうと思います」

「なるほど、それは面白いですね」

「ええ、失敗しても所詮ゲームですしね」

「はい、たかがゲームですから」

 そして今日も何処かで新たな星と種が創られる。 

 そんなお話し。




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