土の戦い


 今日も彼らは頑張っています。

 エイヤッ、エイヤッ。

 エイヤッ、エイヤッ。

 声を挙げて、土化も反土も頑張っています。土にされたら困るけど、土化の頑張りも大したものです。

 土化は何も嫌がらせで土に還そうとしているのではありません。自然から生まれたモノを、自然に還す

のが彼らの役目でして、土化がいなければ、この世はゴミで一杯になってしまうのです。

 土化が全てを土に還しているから、土からまた新しい命が生まれてくるのです。土化がいなければ、こ

の世は駄目になってしまうでしょう。

 木も花も育たなくなり、それを食べている動物も食べ物がなくなって死んでしまうのです。

 でも土化は余りにも一生懸命で、頑張り屋過ぎて、まだ生きているモノまで土にしてしまおうとしてし

まいます。

 彼らには生きているも死んでいるも区別が付かないからです。

 いえ、そもそも生きているか死んでいるかなんて、区別を付けられる方が不思議かもしれません。

 生きているのと死んでいるのとでは何が違うか、って聞かれても、誰も解らないでしょう。生きる、死

ぬって何だろうって一生懸命考えても、ちょっと解りません。

 でも解らないでは土化も仕事になりませんから、解らないけどとにかく頑張ってみようという事になり

まして、何か見かけたら片っ端から土化する事にしたのです。

 他人からすれば迷惑でも、土化からすれば一生懸命にやっているだけなのでした。

 そうして全ては土に還らされる筈だったのですが、自然というものは上手く出来ているものでして、土

化がやり過ぎないように、反土が誕生してきたのです。

 反土は命から力をもらって、その力で土化を押し返します。そのせいで命は生きている時間が短くなっ

てしまいましたが、土にならなくて済むようになりました。

 反土も元々は土化と同じ存在で、もしかしたらやり過ぎなんじゃないかな、と思った土化が、おい止め

ろ止めろ、と土化を止め始めて生まれたんじゃないかと云われています。

 だからきっと彼らの間には。

「皆頑張れ、頑張って土に還そう」

「止めろ止めろ、こいつらまだ生きているぞ。まだ土にしなくて良いんだぞ」

「生きてるってなんだい。死んでるってなんだい。解らないなら全部土に還せば良いじゃない」

「待て待て、そりゃあ生きも死にも解らないけど、まだ動くのだから、土にしなくても良いんだよ」

「動くからって良いとは限らないじゃない」

「そうかもしれないけど、動くのを止めるのは勿体無いだろ。俺達と同じように、一生懸命頑張ってるん

だよ。だから土にしなくて良いじゃない」

 なんて会話をしているのかもしれませんね。

 彼らが何を話しているのかは解りませんし、話しているかどうかも解らないのですが。元は仲間だった

のですから、色んな話をしていると思う方が自然な気がします。

 心を落ち着け、ゆっくりと耳を傾けてみれば、貴方にも彼らの声が聴こえてくるかもしれません。

 そしてその声は、きっと貴方をいつも応援してくれている筈です。

 頑張れ、一緒に土にならないように、頑張って生きようって。

 もう良いから土になっちゃえよ、なんて土化からの声もあるかもしれませんが。たまには彼らの声に、

彼らの頑張りに、耳を傾けてみるのも、楽しいと思いますよ。

 エイヤッ、エイヤッ。

 エイヤッ、エイヤッ。




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