例えば貴方は右に回る事ができる。左には回れない。

　でも左に回れないというだけで、右に行かなければならないという事はないし。左向きになるまで右回りに回れば

左にもいける。

　ただ左に回れないだけなのだ。

　何でもそういうものかもしれない。

　たった一つの事ができないだけで、それに関わる全てのものが不可能と思い。

　たった一つの事ができるだけで、それに関わる全てのものが可能だと思い込む。

　そうやって人は生き、失敗し、成功もしているのだろう。

　全ては自分で勝手に決めてしまう事による弊害である。

　他人に対してもそうだ。

　たった一つを知るだけで、その人の全てを解ったかのように誤解する。

　そしてその誤解が争いと憧れを生んだ。どちらも現実から遊離している。本当の所は何も見ていない。偶像崇拝に

も似た寂しさだ。

　だからもしかしたら貴方にできる事は自分が思っている以上に多いのかもしれないし。

　逆に物凄く少ないのかもしれない。

　人は多かれ少なかれそうやって生きていく。

　だが、果たしてそれは自分にとって楽な、或いは良い生き方なのだろうか。

　それもまた思い込みではないのか。

　ふとそんな事を思った。