夜の空


 片脚で大地を叩くと、静けさに乾いた音が響き渡る。

 さざめく風の音、揺り動く草木の音、心臓と吐息の奏でる音、てんでばらばらのようでいて、不思議な一

体感がある。そう、まるで全てがただ一つの何かであるかのように。

 大地はいつもどっしりと優しい。時に震え、大地に立つ事を許さない時もあるけれど。大地はいつも優し

くそこに在ってくれる。

 人間は大地にこそ住み。この大地が大切だ。

 でもこうして夜、空を眺めていると。

 暗く全てが一色に溶けて、皆全てがこの夜という暗闇に溶けて、そのまま空へ吸い込まれそうな気がする。

 大地も暗く一色だけれど、やっぱり空に吸い上げられるかのような気になる。

 向こうへと、果てしなく何処かへと。

 別段空に恋焦がれている訳ではない。実際空に行けば怖いと思う。

 浮ぶのも飛ぶのも怖い。

 人は立つ場所があって、初めて安心出来る。

 でもやっぱり大地から生まれ、空へと還るような気がするのだ。

 この夜空を見上げていると。




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