時のユリカゴ


 私は揺れている。

 過去も未来も不確かならば、今現在とは何なのだろうか。

 確かなものに支えられないものは。

 やはり不確かで。

 いつまでもゆらりゆらりと揺れている。

 永遠に揺らいでいる?



 ある時一掴みのパンを拾った。

 私はそれを一口で食べてしまった。

 そして消えてしまった。

 今はもう無い。

 何処にも無い?

 いや、何処かに確かにあるのか。

 そもそも食べる前はあったのだろうか。

 それすら解らない。

 人に聞けば確かに自分はそれを見たと言った。

 本当にそうなのだろうか?

 少なくとも私は自信が無い。

 そう思っているだけではないのだろうか。

 それとも思わされている?

 思いたい?

 そう言うと、その人もだんだん解らなくなったと言った。

 そもそもパンだったのだろうか。

 そもそも食べたのだろうか。

 誰も答えなかった。

 全てが不確かだったから。



 ある時一枚の服を拾った。

 私はそれを着た。

 誰かに似合うかどうか聞いてみた。

 するとその誰かは今更何を言うんだと答えた。

 昨日も着ていたじゃないかと。

 そうも言った。

 だけど私には身に覚えの無い物で。

 拾った物だと言ってみた。

 誰かは本当に?と問いかけた。

 私はまた解らなくなった。



 ある者があるものを好きだと言う。

 逆に嫌いだと言う。

 何故?と聞けば。

 好きなものは好き、嫌いなものは嫌いと答えた。

 私はまた本当に?と問い掛けてみた。

 ある者は驚いた様子で何を言っているんだと怒り始めた。

 ただ先程の自信は揺らいだように見える。

 どちらが本当でどちらが嘘?

 もしくはどちらも本当で、どちらも嘘?

 嘘が本当で、本当が嘘なのか。

 そもそもそれは誰が思っているのだろう。

 自分?

 心?

 そんなものに自信は無い。

 私はずっと解らない。



 

 今とは、何時だ?

 私は居るのか、ここに?

 見えているのか、誰に?

 考えているのか、何を?

 在るのか、何処に?

 解らない。

 そして今も揺らぎ続けている。

 本当に揺らいでいるのかも解らないままに。

 それよりも今って何だろう・・・。


EXIT









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