事故肥大


 別に望んだ訳じゃない。

 いや、正確には望んでいたのか。

 ただし前に、初めは、という言葉が付く。

 狙っていた事も確かだ。

 私はそれを望み、そうする為に宿主へ侵入し、増殖を開始した。

 しかし喜べたのは短い間だった。

 私だけがそれを統制できているのなら良かったのだが。

 いつの間にか私の分身までが自我を持ち始め、勝手に増殖し始めたのである。

 それまでは宿主に深刻な打撃を加えぬよう、慎重に慎重に行ってきたのに。

 全ては無意味になってしまった。

 今はもう最初の一人である私でもどうにもできない。

 増え続けた私は、いつかこの宿主さえ滅ぼし、そしてまた私自身を滅ぼす事になるだろう。

 無限の増殖における自己肥大による自殺。

 それが私に組み込まれた全て。

 誰かを犠牲にして初めて増殖できる私は。

 結局は宿主ごと自分を滅ぼす。

 これが仕組まれた罠だとすれば。

 私の生は一体何なのか。

 生きる為に死を選ぶ生。

 まったくもって不可解極まりない。

 だがそれが他ならぬ私なのである。




EXIT