儚きもの 白いもの

 白い残骸が降り積もる。

 はらはら、はらはらと。

 おかげでお掃除がいつも大変です。

 雲の上はふわふわしてて、掃いても掃いてもひっかかります。

 箒では大変なのです。

 だけどこの白い残骸をここから降らすのが私のお仕事なのです。

 ただ掃除するのが仕事では無いのです。

 だけど箒では雲が纏わりついてどうにも面倒です。

 でも雇い主さんはどうしても掃けと仰います。

 ああ、下では掃除機という便利な物が使えたというのに。

 この白いものはただの残骸ですのに。

 ただの夢の残骸ですのに。

 ここには人の見た夢が降り積もるのです。

 でもただの残骸です。

 何の輝きも無くまっしろです。

 だからこれはもう夢ではありません。

 ただの残骸なのです。

 でも雇い主さんはもう一度降らせなさいと仰います。

 同じ夢を何度も見させなさいと仰います。

 それが人の活力の源だからと仰います。

 なので毎年この季節になると一年かけて溜まった残骸をお掃除します。

 箒ではらはら、はらはらと。

 そして来年も同じ夢を見て、同じだけの残骸が降り積もります。

 私は思います。

 もう少し頑張って下さい。

 夢を残骸にしないで下さい。

 私の仕事を増やさないで下さい。

 下の人はこの残骸を綺麗だと、ロマンチックだと仰います。

 そこに夢の残り香を見るからでしょうか。

 こんなものはただの残骸なのですよ。

 だから早く実現させて新しい夢を見て下さい。

 こんな残骸に頼らないで下さい。

 自分で夢ぐらい見て下さい。

 いつもこんな事を考えるのですが、残骸は少しも減りません。

 おかげでまた何ヶ月も掃きつづけなければなりません。

 また今年も掃いてます。

 一生懸命掃いてます。

 私をもう少し楽にさせて下さい。

 あ〜あ、疲れます。

 おかげでまた来年は肩こり腰痛ですよ。

 そんなお話し。



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