死神の憂鬱１

何でこんな目に・・・

　だから嫌だったんだ・・・・。

　ユーリス・モルフェンは心底後悔していた。

「私の魂が欲しいなら、それぐらいしなさい！！」

「えーっと、そんな事を僕に言われても・・・・」

「これだから嫌なのよ、私のように高貴な身分にはそれ相応の方が来てくれないと困りますわ。こんな

さえない男一匹寄越すなんて何を考えてるのかしら。ほんとにもう！！」

　な、なんて我侭なんだ。これだから人間ってやつは・・・。

　ユーリスはそんな想いをぶつける事など出来るはずも無く・・・。

「でも、人には定められた寿命と言うものがあって・・・」

「知らないわよ、そんな事。だいたい私に黙って誰が勝手に決めたのそんな事！！」

「えっ、いやだから。それは死命会議で死神長様とか神様とかが・・・」

「何で私を呼ばないのよッ！！」

「そんな事僕に言われても・・・・・」

　無茶苦茶だ。普通お迎えが来たら、はい解りましたと自分の人生を振り返りながら家族や友達にさよ

ならを言って、素直に昇天するのがスジってもんじゃないか。それを何で僕がこんなにごちゃごちゃ言

われないといけないんだ。変だろ？変だよ。

　理不尽な怒りも出せるはずもなく。

「ですから文句があるなら、あっちで死神長様達に言って下さいよ」

「だから何でこの高貴なる私が、わざわざ身も知らぬ方の元へ赴かないと行けない訳！？そっちから来

るのが当たり前でしょう！」

「死神長様達はご多忙なのですよ。ですから僕達が代理で天まで案内しに来てるんじゃないですか」

「何でそんなとこまで行かないとならないのよ！！」

「そういう規則なんです」

「だから私に黙って誰がそんな事を勝手に決めたのよ！！」

　ああ、堂々めぐりだ。

　二人？はこんな会話をもう一時間以上も続けていた。ユーリスの体力も精神力もすでに限界をとうに

越えている。しかし彼はもう良いですと放り出す事は出来なかった。何故なら、この仕事を放棄する事

による責任は対象と自分の寿命を取り替える事だからだ。

　ユーリスはああと絶望の声を漏らしながら天を仰いだ。

「・・・よりにもよってこんな人間の為に死ねるかッ・・・・」

「ぼそぼそと何を言ってるのよ！！さっさと私の質問に答えなさい！」

　ユーリスは今日幾度目かの溜息をついた。

　絶望、限界、終末、そんな言葉ばかりが頭を駆け巡る。

　僕が走馬灯を見てどうするんだ。

　彼は再度大きな溜息をついた。

「こうなったのも、そもそも・・・・」

　ギャ―ギャ―、キーキー言う声が耳に入りながらユーリスはある男を怨んだ。

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