ある島にて・・・（二十五日目移動前後）

二十五日目（移動前後）

　気分は良かった。

　身体が綺麗になると憑物が落ちたような気分がする。

　裸で寝るのも悪く無いがやはり不便だ・・。

　と言ってもここに私が着れるような服があるとも思えない。

　まあ、寒くないからいいか。

　むくりと起き上がり木の枝にかけてあった服を取る。

　すっかり乾いた服を着込む。

　服を着ると安心する。

　裸は恥ずかしいのもあるが何か落ち着かない。

　でも服も大分くたびれてきたな。

　　

　今日は街方面へ足を向かわせる。

　老人参とも話す為だ。

　瓜としがないこそ泥二人だけど。

　それでも気分がまるで違う。

　老人参もきっと喜んでくれるだろう。

　

　老人参の庵に入る。

　そこには老人参では無くいつぞやのキャベツが居た。

　真中に座っていた。

　何をするでも無くそこに座っていた。

　私は老人参はどうしたと問うた。

　キャベツは無言だった。

　睨み付ける。

　相変わらず無言だ。

　どうも何か変な気がする。

　横走りに後ろに回り込む。

　まったく気付く様子が見えない。

　抜き足差し足近づく。

　身動き一つ見えない。

　葉っぱをぺりぺりと一枚ずつ剥いで見る。

　中心に手を突っ込んでめきっと広げる。

　芯が無い・・・・・。

　

　呆然と佇む。

　芯が無いなんて・・・・。

　その時外から足音が響いてきた。

　このままでは芯抜き魔と思われてしまう。

　足音はどんどん近づいてくる。

　私は思わずキャベツの中に隠れた。

　

　どやどやと誰かが入って来た。

　一人では無いようだ。

　何やら話しているがここではまったく聞き取れない。

　取り合えずじっと身を潜める。

　

　どれくらいそうしていただろうか。

　いきなり身体が浮き上がる感覚がしてキャベツごと持ち上がった。

　そしてそのままえっほえっほと運ばれていく。

　ぐらぐら揺れて上が開きそうになるのを必死で葉っぱを押えて堪える。

　腕が攣りそうだ。

　

　必死に耐えていると。

　やがてゆっくりと下ろされた。

　そして人の話し声がゆっくりと遠ざかっていく。

　

　静かになるのを待ってゆっくりと葉っぱを開ける。

　そっと顔だけ出して辺りを素早く見回す。

　それからずぼっと抜け出す。

　ここは何処だろう・・・。

　周りには何かの残骸とでも言うようなもので溢れていた。

　金属の溶けたような何かの塊。

　腐りかけている大きな木の実。

　折れ曲がった木の枝。

　そう言った物が一種異様なアートで遺棄されている。

　その中の少し開けた所にキャベツが安置されているのだ。

　ここは・・・・。

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