だからこの手を

起承転・・・結？

　　人生は起床と共に訪れる。

　「・・・朝食」

　「ありがとう、柊先生」

　「瑞希、塩取ってくれい」

　「・・・・承」

　　朝ののんびりした感じが好きです。でも、それは休日の事。平日の朝はいつも忙しいのです。

　　しかし今は柊先生と言う協力助っ人がおりますので、結構余裕が出来ました。僕に襲い来る不幸も減

　少を続け、今では人並みにまで落ち着きましたし。今ではのんびりお茶をすする時間もあります。

　「おーい、そろそろ時間だぞーーー！」

　　しかしそんな風に余裕ぶっこいてしまいますと、真弓の逆襲、もといお出迎に来られてしまいます。

　「じゃあ、連れて行きますね」

　「うむ、うちの息子は君にあげよう」

　「あ、あげるって、えっと、その、まだ高校生ですし・・・・」

　　あれから真弓はこうしてほぼ毎朝ここでこうしてもじもじしていくのです。最早日課と言ってもよろ

　しいかと。しかもうちの父はおそらく本気で言っているのでしょう。柊先生はおかしそうに笑ってらっ

　しゃいます。

　「真弓ー、行くぞ」

　「あっ、待てって」

　　それに気恥ずかしさを覚えてしまう僕は、いつもそそくさと家を出発するのです。

　　全体的に大きく言えば変わらない毎日ですが、その実細かいとこは日々色々と変化を繰り返している

　のですね。多分、人の心も僕の心も。

　「まったく、毎朝なんだから少しは慣れろって、真弓」

　「そんな事言ったって仕方無いだろ。私はこういう奴なんだから」

　　顔を見るとまだ真っ赤なままでした。今からこれでは結構苦労しそうですな。

　「まあ、照れ屋な方が面白いしな」

　「うっ、私で遊ぶ気だな・・・・・」

　「ええ、それはそれは一生退屈しないでしょうとも」

　　今日もすっきり晴れています。まだ残暑が厳しいですが、その内ゆるやかに秋へと変わるでしょう。

　　蝉も最後の抵抗のように必至に鳴いております。いずれそれも赤トンボの群れへと交代し、木々も衣

　替えをして景色も一転する。そして紅葉饅頭の美味しい季節がやってくるのです。

　「うへへ～」

　「おい、よだれよだれ」

　「はッ、しまった油断して久しぶりにトリップしてしまうとこだった・・・・」

　　甲斐甲斐しくハンカチで拭いてくれる真弓。こういうのにもやっと少し慣れて来たかも。良く気がつ

　いてくれるって事は、それだけ僕を見ててくれるって事なんだろうな。きっと、それが良い関係を築い

　ていく上で一番大事なんでしょう。やっぱり気持ちって態度に出てくるものですから。

　「二人ともおはよう。ふふッ、今日もアツアツだね」

　「おはよう高見さん。まったく何を言ってるんだか・・・、なあ真・・・・」

　　真弓は真っ赤になって誰かに言い訳しております。　

　「違うぞ。いや、違わないんだけど・・・。でも、違うんだ。いや、でも・・・・」

　　と言った感じで。

　「高見さんが変な事言うから・・・・」

　「ふふッ、ごめんね」

　「おーい、みつふさン。今日は兎とコサックダンスを踊りながら一週間を熱唱しようと思うのだが、み

　つふさンも一緒にどうかね」

　「そんな事より、私のバナナとったのあんたでしょ、返しなさいよ」

　「ええ、怪しい、怪しいですよ。特に藤狩君の口元の辺りに付いてるものが酷く怪しいですね」

　「あーあ、朝から出会うんだよな、やっぱり・・・・」

　　変人三巨頭もお出ましです。どうしても会ってしまうのですねこれが。変人引力説はもう実証された

　と言って良いでしょう。

　「ああ、もう。真弓、逃げるぞッ！！」

　「えっ、あっ、はい」

　　耐え切れず真弓の手を引っ張って逃げる僕、勿論それを追って来る赤司、狗引、溝口。

　「やっぱり最後は私の元に帰って来るのね・・・。ああ、やっぱり運命の糸は銀河を超えるのよッ」

　「ああッ、前にめぐタンがッ！！」

　　そしてあっけなく捕まり、さらに状況を悪化する毎日。でも、そんなこんなでも皆一緒に笑い会えて

　います。きっとこの関係はずっと変わらないのでしょう。楽しくも面倒くさい毎日の中で、これから何

　があって何を考えて、その結果どうなったとしても・・・悔いの無い人生を。

　「真弓、へるぷみー」

　「駄目だ、これだけ濃いのが揃ったら、とてもじゃないけど私の手に負えないよ」

　「じゃあ、せめて僕の手を離すな！」

　「ああ、絶対離すもんか！」

　　そして願わくば、この手を一生離す事が無いように。

　　暖かさに運命を込めて。

　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　了　　　　　そんなお話♪

BACK・ EXIT