最終兵器

ロンギヌス

「ミルドさんッ！？」

　崩れ落ちるミルドを慌てて後ろに居たギルが受け止める。

「くそおおおおおッ！！！」

　そしてその横をレイが通り抜けていった。手にはライフルを一本握り締め。

「止せ！！」

　片手で叩き落とすように、ギルガが特攻しようとしたレイを止めた。

「嫌だッ！！」

　しかしレイは尚も立ち上がり、駆け出そうとする。

「いい加減にしろッ！！！」

　ギルガは思いっきりレイの腹にその拳を叩き込んだ。レイの体がくの字に曲がる。

「！！！？？」

　そのまま声にならない呻き声を上げて、レイはその場に崩れ落ちた。

「しばらく頭を冷やせ！！！」

　とは言え、そう言うギルガの目も怒りに爛々と輝いていた。他に誰もいなければ、彼は一人で特攻し

たかも知れない。ただ、今は人間側の総大将であり、若者達への責任感もあってそれを辛うじて止めて

いるのだろう。

　当然ギルもレイと一緒に行きたかったのだろうが、ミルドを支えている為にそれも出来ない。行けば

おそらくギルガに殴られていただろうから、そのおかげで助かったとも言えるのだが。　

「小僧がやられるとは・・・・・」

　脳の節々から熱いモノが噴き出ている。歯を食い縛って冷静を装っているが、ギルガもとても平静で

はいられない。しかし例え平静であったとしても、思考の辿り着く所は同じだっただろう。即ち、人間

の敗北だと。

　少なくともギルガにはミドガルズオルムに勝つ方法などまったく思い浮かばない。

「こうなれば・・・」

　彼はすらりと長刀を抜き放った。

「ギルガさん！」

　ギルが制するように叫ぶ。

「・・・・後は頼む」

「駄目です、ギルガさん！！」

「しかし小僧がいなくなれば、キメラに対抗出来そうなのはこの鬼斬丸だけだ。だからわしがミドガル

ズオルムを引き付ける。お前達は引いてリック達と共に撤退しろ、・・・・今回はわしらの負けだ」

　そう告げて、ギルガはゆっくりと踏み出す。

「駄目ですよ・・・・ギルガさん」

　か細い声に振り返ると、いつの間に気がついたのか、ミルドがうっすらと開けた瞳をこちらに向けて

いた。そしてギルに礼を言って静かに立ち上がると、もう一度ゆっくりと口を開いた。

「ギルガさんが行くのなら、私も行きます」

「ミルド・・・・」

　ギルガは溜息をつき、諦めたように長刀を鞘に戻した。そして何かを言おうと口を開こうとした、そ

の時だった。

　不意に洞窟内に光が満ちた。

「なんだッ！？」

　慌てて光の方へと振り返る。

　ミドガルズオルムの劫火に焼け残った、あのロンの持っていた棒が光を帯びて浮き上がって行く。そ

して、丁度ロンが胸前に構えていたと同じ位置にゆるりと浮かぶと、再び強い光を瞬き始めた。

「・・・・ロンギヌスシステム・・・強制起動・・・」

　発せられた全ての光が集まり、何かを象って行く。まるでパズルのピースをはめるように。

「・・・これは・・・まさか・・」

　驚愕に目を見開くミドガルズオルムの眼前で、それは見る間に形を生す。

　そして再び閃光に包まれた。

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