これも一つの神威の遺産

戦闘兵器

　長い廊下を何度も曲がり、引き返している内に一つの部屋に辿り着いた。側にカードリーダーが付い

ており、重厚で頑丈そうな扉。如何にも機密の匂いがする。

「ここならお宝がありそうでやすね。さあ、さっさと開けやしょう」

　隊員達と一緒に歯を食いしばって力を込める。四人ずつに別れた為に、力仕事は尚更重労働になる。

それでも扉を何とかこじ開け、勢い込んで中へと進入する。幸い何の気配もしなかった。

「おお、あるある。しかしどれも結構錆付いてやすね」

　特殊な武具なのだろう、銃や電子刀等で見たことも無い形状をした兵器らしきものがずらりと並んで

いた。だが、保存状態が悪く、使えるものはほとんどなさそうだった。

　錆付いた物、液状の燃料らしきものが割れて流れ出ている物。この工場自体が機能していない為に、

ほとんど駄目になったようだった。ただ、威力のありそうな特殊銃が数丁使えそうで、大いに収穫が有

ったと言える。

「リック副長、奥に何かありますよ」

「ん？」

　リックがそちらを覗いてみると、割れたケースの中に長い剣のようなモノが鎮座していた。鞘も柄も

全て真っ黒に染められ、そのまま夜になると周囲に溶け込みそうだ。

「これは・・・・刀でやすか、もしかしたら・・・。これは珍しい・・・・」

　その剣は独特の少し反身の形状をしており、鍔にも見事な細工が施されている。話に聞く刀と言うや

つに非常に似通っていた。刀はもうその製法が失われ、現存するものも少なく、今では幻と呼ばれてい

る。その材質は驚く程硬く強く研ぎ澄まされていて、扱いやすく非常に切れる。

　強度はキメラにも匹敵すると言う恐るべき刀もあるらしいが。

「例え錆付いてようと、こりゃあ値打ちもんだ。早速いただきやしょう」

　銃でケースの割れ目を広げ、大事に刀を取り出す。刀は保存に手間がかかるらしいので、状態は期待

出来ないとは思ったが、好奇心もあってゆっくり鞘から抜き放った。

「なッ、この吸い込まれそうな輝き・・・・・」

　予想に反して、その真っ黒な刀身は水面のように透き通っていて、鈍く輝いていた。吸い込まれそう

な、飲み込まれそうな、そんな暗い光で。

「こ、こりゃあ・・・・もしかすると、あの・・・・・」

　その時やけに派手な音がして、天井の隙間から漏れる光が一層輝きを増した。

「この赤い光はッ！皆急いであの光へ向かうですぜッ！！」

「了解！！」

　手に入れた武器を使えるようにいじりながら隊員達が即座に部屋を飛び出す。リックも抜き身の刀を

鞘に収めると、急いでその後を追った。

　あの赤い光は貴重な信号弾の光。あれを使うほど切羽詰っていると言う事は・・・・。

「ここの親玉はそれだけ危険なキメラだったと言う事でやすね」

　通路を駆け曲がり、壁に開いた穴から通路をショートカットする。幸いそう距離にして離れていない

所にいるとは言え、救援に向かうまではまだしばらくかかりそうだった。

「何とか時間を稼いでくれれば良いのでやすが・・・。どんなキメラでも、こいつがあれば百人力、い

や千人力でやすぜ、隊長」

　手にした長刀の重みをしっかりと感じながら、リックは勝利は疑わなかった。後は隊長達がやられる

前に到着出来れば。

　視界に映る景色は少しずつ朱に染まり始めている。

BACK・ EXIT・ NEXT