まだまだこれから

訪れた何かを・・・

　ガタガタと鉱物が触れ合う音がする。

　細かな振動は耳障りの良いモノでは無いと言われるが、今はそんな事には構っていられない。

　目的の物が無ければ、苦労して危険を侵してまでこんな所に来た意味が無い。人間には無駄にする時

間など残されてはいないのだから・・・。

「レイ、そっちはどうだ！？」

「んー、まだ解んないよ、ギル。ごちゃごちゃしてて・・・・。リア、そっちはどうだい？」

「こんなに荒れ果ててるなんて思わなかったから・・・・、こっちもまだ解んない」

　三人の若い人影が溢れかえった瓦礫の中で必至に何やら探しているようだ。

　何かを動かす度に埃が盛大に空を舞うので、かなり視界も悪く作業は滞りがちになる。お世辞にも健

康に良さそうな環境とは思えない。彼らが付けているマスクが無ければ話もまともに出来ないだろう。

「ここになら何か使えそうなのがあると思ったのにな・・・」

　ギルと呼ばれた青年が溜息を付く。

「んー、元アポクリスプ研究所だって言うから、何かありそうだとは思ったけど。やっぱり損傷も激し

かったみたいだね・・・」

　レイと呼ばれた青年がそれに応える。

　最近さらにキメラ達の動きが活発化し、それに対抗するための武器が欲しかったのだが。

「早く帰らないと、いつキメラに発見されるか解らないものね」

　リアと呼ばれた女の子も溜息を付く。

　後数時間もすれば日が落ちてしまう。夜に出歩く事は、夜目の利かない人間にとって自殺行為以外の

何物でも無い。キメラの個体数も年々少しずつではあるが増えている。キメラも繁殖する事は可能なの

だ。ただ繁殖能力は低く、それが人間にとっての救いになっている。

「あ、待って。あそこにあるのって階段じゃない？」

「ん？」

　リアの言葉にレイが駆け寄る。そしてリアが指差している大きな瓦礫の下を覗き込む。

「あ、そうだよ。あれって階段だよ、絶対。ギル、あの上に乗ってる瓦礫を除けよう」

「ああ、解った。レイ、お前はそっち持ってくれ」

「了解、落とさないでくれよ、ギル」

「解ってるって」

　二人して何とか瓦礫を除ける。流れる汗が木漏れ日にキラリと光る。夕暮れ近いとはいえ、まだまだ

暑い季節だ。

「っはあー、もう駄目だー」

「俺ももうしばらく動けない・・・・」

　瓦礫を移動し終えた二人の青年はその場にぐったりと倒れ込む。

「リア・・・悪いがお前だけで頼む」

「解った、ギル。二人はそこで休んでて」

　リアは携帯ランプを手に、暗がりの階段を下りていった。

「何だろうこの階段・・・・。この研究所の図面には載ってなかったけど」

　彼女達の集落に訪れたキャラバンから買った図面には、その階段の部分に大きな柱が描かれている。

「隠し階段ってわけ・・・・一体何があるんだろう・・・」

　リアは暗がりに一人で心細い気もしたが、勇気と意地を奮い起こしてそのままゆっくりと進んで行く。

　この先にあるものが何かは解らないけれど・・・・。

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