似ている？

二人と一人

　一頻り笑った後、ミルドは何とか仕切り直し。

「これからは迷惑警備員の方に迷惑をかけないように」

　と、保護者然とした表情でロンに述べてから、静かに再び歩き出した。

　ロンも少ししゅんとした面持で大人しく付いて行く。

　ミルドは極力振り返らないようにする事にした。靴音もカツカツと良く響くので、逸れる心配も無い

だろうと言う事も考えた上での事である。ただ、見ると笑ってしまう可能性があるので見ない。と言う

単純明快な理由が主ではあったが。

「これは何ですか？」

　ふとロンの靴音が止まった。ミルドは深呼吸してから振り返る。

「ああ、これね」

　ロンの視線の先には、長方形の扉型の凹みがあり。それを形付けるかのように長方形の切れ目が付い

ていた。それは壁にめり込むように設置されている。横には矢印型のボタンがある。

「これはエレベーターと言う機械よ。これに乗れば上階まで早く移動する事が出来るの。でも、これは

エネルギーを節約する為に普段は使われていないわ」

「そうなのですか・・・・なるほど」

　ロンはすっと視線をエレベーターから戻した。するとミルドとばっちり目が合ってしまう。

　彼は機械でも停止したものにはあまり惹かれないらしい。それとも見た目がただの扉に見えるからか

も知れない。

「じゃあ行くわよ」

　ミルドは慌てて視線を前へと返した。何故なのかは彼女にも解らない。ただ、ロンの目が澄み過ぎて

いたから。

　そして階段を何度も上がり、大仰な扉を開けると、秘書官らしい女性が居て、ミルドに一礼をしから

奥へと通してくれた。キャラバン隊長ともなると、顔パスになるらしい。警備員も愛想良く笑っている。

　初めて見るはずのロンの事もまったく問わない。それも信頼の証なのだろう。

「こちらへ」

　ミルド達が入ると、秘書は一礼をして扉を静かに閉めて行った。

　室内には今となっては珍しいガラステーブルやソファが置かれている。ここだけは昔のままの光景な

のかも知れない。そして、そのソファに座っていた一人の女性が立ち上がって、こちらに微笑みかけた。

柔らかそうな明るい金髪が微かに揺れる。

「久しぶりね、ミルドリア」

「しばらくね、アリア」

　ミルドも優しく微笑み返す。そして握手を交わし、しばし冗談混じりのあいさつを交わした。

　程なくして。

「こちらは？」

　アリアと呼ばれた女性がロンに微笑みかける。

「この子はロン君。ここは初めてだから、案内してあげてたの。ロン君、こちらはアリア。この鉄の集

落の長老よ。これでもね」

　ミルドは悪戯っぽく笑った、長老のとこを強調しながら。

「ひどいわね、私もまだまだ若者なのに」

　アリア長老は朗らかなに微笑んだ。それにとても人の良さを感じさせる。歳はミルドと変わらないく

らいか。どちらにしても、長老の響きには似つかわしくない。その抜けるような美貌も、ミルドと比べ

ても遜色が無い程だ。眼鏡が良く似合う。

「よろしくね、ロン君」

　アリアがにこりと微笑みかける。

「よろしくお願いします」

　それに馬鹿丁寧に頭を下げるロン。これにはアリアも思わず笑い声を立ててしまった。ロンは不思議

そうにそれを見ている。

「ごめんなさい、何でもないの」

　アリアは２、３度深呼吸をして気持ちを整え、改めてこう言った。

「ようこそいらっしゃいました、鉄の集落へ」　

BACK・ EXIT・ NEXT