再開も雪泡のように

当惑の幻像

　鉄の集落を発って十日、ミルド達は森の集落へと到着した。

　キメラとの遭遇も無く、予定通りに上手く進めたとはいえ、驚異的な速さとだったと言っていい。天

候も良く、実に穏やかな陽気だった。

　そしてミルドが到着しての第一声が。

「ギ、ギルガさん！？」

　と言う驚きの一言だった。

「おう、ご苦労さん」

　対してそれを向けられた当の本人は、実にさっぱりとした返事を返した。

「何故、ギルガさんが？今頃はもっとずっと先に・・・・」

「ああ、鉄の集落からの要請だよ。あそこに行ってたのなら、もう知っているだろう。この近くで不可

思議な嵐があって、そこで妙な機械を見つけたので今から運ぶ所よ」

「い、今からですか？」

「おう、じゃあ後は頼まあ」

　そう言うと、あいさつもそこそこにギルガの一隊はすぐさま行軍を開始して、見る間に彼方へと消え

てしまった。背中に括りつけられた長刀が不思議な存在感を放っていたのが、見送るミルド達の心に残

ったと言う。

「後を頼む？？」

　気を落ち着かせて、改めて集落を見回してみると。如何にもザワザワとしていて、誰もが慌しく動き

回っていた。

　事態を把握しようと思案しているミルドに、飄々とした初老の男が近付く。

「お疲れ様でしたの、ミルド隊長」

「これはラフィアス長老」

　ミルドは慌てて姿勢を正す。

「実は集落の移転作業中なのですよ。嵐の所為で遅れましたが、ギルガのおかげで随分助かりましたわ

い」

「ああ、そうでしたか。それと見たところ、副長のリギド以下隊員の姿が見えないようですけれど」

「ええ、ギルドに任せて。彼らは本来の仕事に戻ったそうです」

「なるほど、それで解りましたわ」

　ミルドは納得したように頷いた。自分がリギドでもそうしただろう。

「それよりもお疲れでしょう。風呂を用意しておりますので、旅の疲れを落として下され。本当に何と

お礼を言っていいのやら」

　ラフィアスは深くゆっくりと頭を下げた。

　これには流石にミルドも慌ててしまい、すっかり忘れ去られている隊員と青年団の事を思い出すのに

は、更に少しの時間がかかったと言う。

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