幸不幸は等価かも知れない

安らぎも心の中に

　ミルド班は当たり前だが、ほぼキャラバン隊員で占められている。その為に一番統制も取れており、

隊員の個々の能力も手伝って作業効率は高い。この手の作業をやり慣れていない者が多かったのだが、

今では誰しも手馴れたものだった。

　慣れると言う事は、その作業の要点を掴み取ると言う事であり。それも一種のスキルと言えるかも知

れない。

　そしてロンはミルドに請われてこの班に入れられている。

「ロンくん、これは何処へ運べば良いの？」

「えっと、それはあそこですね」

　という風に計画書を持って、ミルドの補佐官役を務めている。

　隊員からは始終ミルドと一緒に居られるので、随分羨ましがられたが。不思議とやっかみを持たれる

事は無かった。それは彼が純粋に仕事としてしているからで、人徳とも言えるかも知れない。

「木材はあの荷車に積んでね」

「了解」

　そしてミルドがロンから聞いた通りに班員へ指示を出す。

　これが実に作業をスムーズにさせ、予定よりも速くどんどんと作業が終わっていく。これが一つはレ

ジトを無意味に焦らせる原因ともなっているのだが、ロン達にはそれは解らない。

　夜になり、作業を中断する。この調子でいけば明日には全ての作業を終えられるかも知れない。

　焚き火を囲む誰の表情も明るい。家屋もほぼ解体が終わって、今は野宿同然の暮らしなのだが。それ

も皆楽しんでいるようだ。常に家にいる村人には新鮮な体験であるし、何よりキャラバンが居てくれる

と言う安心感がある。キメラへの不安も薄れて然りと言うものだろう。

「今日もご苦労様。君が居てくれると助かるわ」

　ミルドが隣に座らされたロンににっこりと微笑む。

「いえ、ただ計画通りに伝えているだけですから」

　ロンははにかむように笑う。もう以前の表情のぎこちなさも完全に抜けているようだ。

「さあ、たくさん食べてね」

　そこへ女達が料理を次々に運んでくる。森の集落は食料は豊富だ。海の幸こそ無いが、森から受ける

恩恵はそれを補って有余る。

「お疲れ様、ロン」

　配膳の仕事を終えたリアがロンの隣に座る。

「リアもお疲れ様」

「ううん、皆に比べたら私達のやる事は家事くらいだから」

　リアは照れくさそうに頬を掻く。

「でも、リアさん達が居るから私達は仕事に専念出来るのよ。いつもありがとうね」

　ミルドがリアに微笑む。リアも微笑み返し。

「いえ、ミルドさんが居てくれれば私達も安心して仕事が出来ますから」

　しかしこの二人の間にはどこか不思議な緊張感がある。ロンは文字通りこの二人の間に居るので、い

つも不思議な息苦しさを感じている。が、どちらも表情はにこやかなので何も言えない。

　近くに座す人に助けを求めようと視線を向けるが。誰もがさりげなく視線を逸らしてしまう。なので、

ロンはいつも大人しく食事をしている。

　奇しくも真反対側に座っているギルとレイも、これを焚き火越しに眺めながら静かに苦笑を浮かべる。

「ギル、あれじゃあロンも辛いだろうね」

「ああ、しかもロンは何でああなるのかも理解出来ないのだろう」

「助けてあげたいんだけどね」

「ああ、出来る事なら」

　と言いつつもロンの視線から目を逸らす二人だった。

　こうして一部を除き、無事に移転完了出来ると、誰もが思っていたのだが。

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