決意を超えた覚悟

大挙するが為

　長老アリアへの伝言を秘書に２，３残し、長老宅を出ると。ギルガは急いでリックの元へと向かった。

住宅街を通り、商業街に入る。ここでリックは武器交渉をしているはずだ。

「リック、首尾はどうだ」

「あ、隊長、お早いですね。あっしの方は目ぼしい物は見つけやしたので、後は交渉だけですぜ。他の

やつらは物資運搬等でやすね」

「そうか、じゃあ手早く済ましちまえ。出来次第出発するぞ」

「へえ、しかし大丈夫ですかね。人数もっと集めた方が良いと思いやすぜ」

　リックが珍しく不安そうな表情を浮かべる。キメラの本拠地に乗り込もう何て言っているのだから、

当然かも知れない。それはビルの上から傘をパラシュート代わりに飛び込もうと言っているのと変わら

ないのだから。

「その点はもう仕方がねえだろう。一応アリア長老に頼んでおいたが、どうだろうな。まあ、集合地で

あるキメラの本拠まで行かねえとどうだか解らん」

「それはかなり分の悪い賭けですぜ・・・・」

「どの道、キメラと本気でぶち当たろうなんて、初めから分が悪すぎる」

　ギルガ隊長はもうとっくに覚悟しているらしく。不安も当然あるようであったが、微塵の迷いも無い

ようだった。

　こうなると副長としては黙って付いて行くしかない。

「はああ・・・」

「何だ、変な溜息をしやがって」

「いやいや、入るキャラバン間違えたかと今更後悔を・・・」

「フハハ、もう遅い」

　豪快に笑うギルガを見ていると、最早リックは是非も無かった。

　しかしこの一大作戦に果たしてどれほどの人員が集まるかは甚だ不安を感じる。人類にある戦力は圧

倒的に少ないのだから。そう、キメラがすでに放置しておくくらいに圧倒的に。

「ギルいよいよ出発だね」

「ああ、出発だ」

　レイとギルは前回訪れた時とは違い、二人とも忙しく雑務に追われていた。今は飯時の為にしばし食

堂で休憩している。

　残っている仕事を思うと憂鬱にもなるが、決意は更に研ぎ澄まされていくような気がしていた。

　二人ともご飯に野菜炒めを乗せたものをかき込んでいる。

「やっと少しは役に立てるようになったんだ。そして俺達がロンを助けなくてはいけない。例えロンが

何者であろうと」

「うん、解ってるよ、ギル。一緒に帰ろう、リアをあまり心配させないようにしないとね」

「そう言う事だ」

　がつがつとかき込むギルを見ながら、レイはふと手を止める。

「でも・・・」

「ん？」

　ギルも自分の丼をテーブルに置く。

「やっぱり・・・・、やっぱり少し怖いね。僕って臆病だね、ギル」

「・・・・そんな事は無いだろう。誰でもやっぱり怖い」

「そうかな？」

「そうさ、ただなるべく意識しないようにしているだけさ。怖くても行くしか無いのだから」

　ギルは再び丼を持ち上げて、かき込み始めた。

「そうだね。僕も怖いけど逃げるって気はしないし」

　レイも丼をかき込み始めた。

「ただ・・・」

「ん、どうした、レイ？」

「これ不味いよね」

「ああ、確かに。早く帰ってリアのご飯を食べよう」

「うん」

　そしてまた忙しくかき込み出す二人だった。　

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