集結

種の起源

　キメラ発祥の地、つまりはそもそもの元凶の国は以前にユーラシアと呼ばれていた大陸のほぼ中心に

位置していた。そこは終末の予兆とまで言われた長年の天変地異と異常気象等によって、大陸を貫くよ

うに横断していた山脈が消え、不思議なほど平らな大地となった場所だった。

　その為か鉱物資源も豊富で、大河の影響か作物の実りも良かった。そう言った環境も手伝い、その国

は見る間に肥大して行き、最後には世界の覇権を握る程にまでなったのだが。周知の通り、自ら生み出

させたキメラによって真っ先に滅ぼされてしまった。

　今は昔日の面影も無い廃墟だが、そこに一つだけ当時のままの姿を誇る建物がある。それが元アポク

リスプの研究所であり、キメラ生誕の地であり、現在キメラ王ミドガルズオルムが居るキメラの本拠で

もある。

「流石にここは酷えな・・・・」

　ギルガが無数のクレーター状の破壊痕を見て溜息を洩らす。

　鉄の集落から１０日、複雑な地形も手伝って徒歩では時間がかかるのだが、実は左程鉄の集落とは距

離は無かったりもする。

　ここで落ち合う予定なのだが、到着した時には未だ他に人影は無かった。或いは援軍は無いかも知れ

ないのだが・・。

「隊長、取りあえず休みましょうぜ。皆、疲労が限界ですぜ」

　リックが自身も酷く疲れた顔でそう言った。何にしろ、非常な悪路だったのだ。

「ああ、良いぜ。まあアリアの方の準備も暫くかかるらしいからな」

　例の剥き出しの機械を最大出力で起動させるのは、現在でも中々手間のかかる作業らしい。それを知

ってて敢えて強行軍を組んだのは、元々ここでしばらく休養を取る為だった。本拠の近くと言う事でキ

メラに発見される心配もあるが、そうなれば進軍するのみと当に皆腹を括っている。

　そして落ち葉や枯枝を使ってカモフラージュ、匂いを消す為にわざと泥を塗ったりして慎重に野営を

とったのだった。

　火を使えなかったのは辛かっただろう。

　それから二日、幸いキメラにも目立った動きは無く発見される危険もまったくと言って良いほど無か

った。灯台下暗しと言う言葉もあるが、やはりキメラの人間に対する意識が失せてきているのだろう。

　それだけ明らかな力関係の差があると言う事であるが、逆に言えば今こそが最大のチャンスでもある

だろう。

　その間、心配されていた援軍も徐々に集まっていた。人数はそう多くは無いものの、それでも非常に

ありがたく、心強い。

「ギルガさん、私達も使って下さい」

「ミ、ミルド！」

　そして驚くべき事にミルド隊も駆けつけたのだった。例の川の集落で療養中だった者達で、ミルドを

始めとして誰もが包帯も取れ、顔色も以前よりもずっと良い。訓練を積んだのか、色も薄黒く焼けて如

何にも健康そうだ。

　他にも歴戦の兵と言った老キャラバン員から腕に覚えのある女剣士まで、多種多様な者達が合わせて

５０人程も集まった。この時代ではこれは相当な人数である。何しろキャラバン隊が４隊程も組めるの

だから。

　現在全世界で活動するキャラバンの隊数が１０隊程だと言えば、この数の比重が解るだろうか。

「隊長、こんなに集まってくれやしたぜ」

　リックはもう涙を流さんかと言った態だ。

「ああ、ありがてえ・・・。今ならこれだけ居れば十分いける」

　そしてこの日、待望のアリアよりの通信が入った。

　人類の存亡を賭けた作戦が開始される。　

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