危なげなき力

主神格

「小僧に何をしやがった！！」

　ギルガもキメラ・オーディンに長刀を突き付け、身構える。

「フン、一々説明してやる義理は無いわ。無智たる人間め、お前等如きの相手はこやつで充分だ。ガー

ゴイル！」

　その声に全員が周囲に警戒を張った。そもそもの元凶たるガーゴイル、それだけに憎しみも大きいが

それ以上に警戒心が強い。

「ガーゴイル！ガーゴイル！」

　しかしオーディンの叫びに誰も応える者はいなかった。

　ただ虚しくその声が室内を木霊するのみ。

「ガーゴイルめが、あの役立たずが！よかろう私自ら相手してくれよう」

　オーディンが低く何事かを呟くと、静かにその重ねた両手に細長い槍が現出した。

「グングニルが使えずとも、人間等に遅れを取る私ではないわ！」

　そして素早い動きで槍の連撃。

「うッ！？」

　ミルドが慌てて槍で防ぐ、衝撃が重い。今までのキメラと違い、人間と同じ体格に見えるのに、その

威力はむしろ強い。力も速度も高い次元で安定していると言った感じだった。

「つあッ！！」

　見かねたギルガが横から一刀。

「フン！」

　しかしそれも容易く弾かれ、逆に柄の一撃で吹き飛ばされてしまった。

　片手を突き、何とか受身をとって反転して起き上がる。

「何をぼさっとしている！」

　そして呆然としていた隊員達を叱り飛ばす。

「りょ、了解！！」

　慌てて隊員達は攻撃を開始した。

　しかし全員で攻撃しても、まるで効果が無い。オーディンの動きに皆翻弄され、子ども扱いされてい

るように容易く凌がれてしまう。全て予測され、掌の上で弄ばれているような、そんな屈辱感さえ感じ

る。

「つあああッ！！」

　気合を乗せたギルガの一撃も、またも容易く受け流されて一蹴。呼応して飛び込んだ隊員には槍の一

撃で胸を貫く。オーディンは薄ら笑いを浮かべながら。

　遊ばれている。

「くそったれが！！」

　唸りを上げた渾身の一撃。しかし完全に見切られているらしく、あっけなく防がれまたしても一蹴。

入れられた腹の底から嘔吐感が込み上がる。

　これほどの無力感はインドラと闘った時以来だろう。しかしあの時のように誰かの助けは期待出来な

い。ロンも生きてるのか死んでるのかぴくりとも動かず、ただ水槽の中に静かに浮かんでいる。

「ならば！」

　一転してギルガはそこら辺にある機械に向けて長刀を振り下ろす。しかし反発するように刃がそこま

で届かず、押し返されてしまった。バランスを崩してどうと尻餅をつく。

「フハハハハハ、貴様如きにそれは斬れんよ。我等の力が無ければ触れる事も出来ぬ」

　オーディンの嘲りの声が響く。

「くそッ！！」

　どうやらここにも防護フィールドのようなものが働いているらしい。　

　そしてこの間も隊員達は次々と屠られ、傷付けられている。

　人の悲鳴のみが室内を支配するかのように・・・。

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