亜戦線

分岐道

　話は少し前に戻る。

　研究所内に入り、何とか１０数人だけが奥へと進めたのだが、警備システムとキメラの所為でやはり

ギルガ達から逸れてしまう者も少なく無かった。

　そしてその中にレイとギルの姿も在った。鍛錬を重ねたものの、やはり実戦経験不足は如何ともし難

い部分があったのだろう、ギルガ達の突破力に付いていけず乱戦に揉まれ、いつの間にか周りには二人

以外に誰も居なかった。

「ギル、皆何処行ったのかな」

「さあ、見当もつかない」

　ゴブリンやコボルドを倒しながら、それでも先へ先へと進んでみる。一応彼等もこの研究所の図面を

見て来ているのだったが、こうなると最早検討も付かない。目印となる大部屋か重要施設でもあれば良

いのだが。どこを見ても似たような風景が続く。

　古の昔で言えば、病院のような無機質でどの階層も似たような建築を想像してもらえれば、感じが掴

めるかも知れない。勿論、この研究所には階数を示す札も無い。居るのはキメラだけ、そんな光景だけ

が在る。

「ギル、そこ気をつけて」

「ああ、なるべく端を行く」

　一般に施設内に付けられるような警備システムは通路の真中に対応した設計がされている。その為、

端の方にちらほらと盲点が出来たりするのだが、例えば監視カメラの真下等。この研究所の警備システ

ムは特に甘く、数も多くない。おそらくそのほとんどは、キメラ達が制圧時に壊してしまったのだろう。

　その後増強されたにしても、如何にも設置の仕方が下手と言わざるを得ない。

「しかし、変な所に来たな。レイ、いっそ引き返すか？」

「んー、でも今更引き返しても、キメラがわんさか居るよ」

「そうだな・・・ん？？」

「どうしたの、ギル」

「しッ」

　ギルに制され押し黙るレイ。ギルはじっと一方向を見ている。

「今、何かの影が・・・」

　レイもそちらを凝視する。

　そこにはぱっと見には解らないような通路が在った。以前はドアが在ったのだろう、破壊痕がくっき

りと残っている。

「あの通路がどうかしたの」

　ギルに近付き囁くような小声で改めて問い掛ける。

「ああ、こうフッと影が・・、あの中にな。・・・・よし、行ってみよう」

「行くって、あの通路に？」

「他に何処が在る？」

　こういう時のギルは少し頑固と言うか意固地にになる。それを知っているレイは溜息混じりに静かに

こう答えた。

「じゃあ行こうか」

　そして二人はその隠れるように在る通路の中へと踏み入れて行った。

　激戦区、つまりはギルガ達から余程離れているのかもう辺りにはキメラの姿も無かった。

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