親愛なる者の下へ

友援

　そうして室内を観察するギルガが、ふと入って来た扉に目を止めた時だった。

「キメラかッ！」

　ゆっくりと扉が揺れる。

　ミルドも立ち上がり、愛槍を構える。

「ち、違いますよギルガさん」

「刃を下ろして下さい」

　しかし気負ったギルガ達の肩を透かすように、そこから現れたのはいつの間にか逸れていた、レイと

ギルの二人だった。

「お前等、無事だったのか。しかし何処行ってたんだ、この忙しい時に」

　安堵の吐息を洩らしつつ、ギルガ達は刃を納めた。ミルドは再び超級コンピューター、ミーミルのモ

ニターへと向かう。

「ろ、ロンッ！？」

　そして研究室へ踏み入れたレイとギルは驚愕と歓喜の混じった声を上げてしまった。慌てて手で口を

塞ぐ。二人はしばらくそれを見入ってから、またしても同時に問いかけた。

「これはどういう事ですか？」

　ギルガが頭を掻きながら答える。

「わしらも何がどうなっているのやら解らん。ただ、小僧を研究しているのだとかここに居たキメラが

言っておった。そいつも何とか倒して、さて助けようと思うのだが・・・、このコンピューターが中々

の曲者でな・・・」

　そして溜息をついた。何も出来ない事も悔しいのだろう。穏やかだが、珍しくギルガの表情は硬かっ

た。モニターに向かうミルドの表情も、いつもの彼女に似合わず険しいものだった。

「それでお前等はどうしてたんだ？」

　今度はギルガが二人に問い掛けた。

　まだ水槽に見入っているギルを見て、レイがゆっくりと答えた。

「逸れてから全ての場所に繋がる警備室のような所に出て、そこに居たガーゴイルを倒して、そこにあ

ったモニターからここの状況を知って、手に入れた地図を見て急いでここに駆けつけたんです」

「ガーゴイルの野郎、そんなとこに隠れてやがったのか！しかし二人だけで良く倒せたな、てえしたも

んだ」

「いえ、不意を付けただけで運が良かっただけです」

　レイは照れくさそうに頭を掻く。事実、運が良かっただけだろう。まともにやっていたとしたら、果

たして勝つどころかまともに相手に出来たかどうか。

「それより、僕にも手伝わせてくれませんか。機械の操作なら、僕にも少しは自信があります」

「おお、そうか。それはありがてえ、ミルドを手伝ってやってくれ。わしはもう少し室内を探してみる。

おい、そっちの小僧はわしを手伝え」

　ギルガはレイに頷き。そして呆けていたギルを軽く一喝して呼び戻した。

「あ、はい。解りました」

　ギルはまだ水槽の方を気にした様子だったが、それでもギルガの下へと近付いた。それから二人で左

右に分断し、とにかく調べてみる事にした。機械群に張られていたシールドはミルドが何とか解いてい

る。

　それから気が焦るのを抑えつつ、皆それぞれの作業を懸命に実行し続けた。幸い、オーディンを倒し

たおかげでキメラの無尽蔵な増殖だけは止められている。後は祈るように、それぞれがただやれる事を

やるだけだった。

　だが未だ、人間側の劣勢は否めない。

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