愛、それは勘違い

洞路は続くよ何処までも

　そうして僕ら三人、いや二人と一釜は探索行中なんだけど。この洞窟がまた、皆が探索を断念したの

が当然と思う程に入り組んでてすぐさま迷いそうな勢いだった。仕方が無いので、壁に来た方角が解る

ように印を付けているのだけど、さて効果があるかどうか。

　こういう時に紙とペンでマッピングが出来れば良いのだけど、持ち込まれた数が希少で、僕なんかで

はとても買えないし勿体無くて使えない。

　地上知り人達が不便だ、不便だと事ある毎に言うのも当然だと言う気がした。今までそれが当たり前

だと思っていたから気にしなかったけど、こういう事態になってみると僕にもようやく気持ちが解った。

　しかしそれだけでも大きな収穫だと、住居に帰る訳にはいかない。堀場を発見しないと・・・・、で

もすでにこれだけ離れていると、引越しも考え無いといけないな。住み易そうなとこも見当付けておか

ないと。

「こっちで本当にあってるのか、ロッコル。迷子なんて美しく無い」

「知らんよ、そんな事。俺だってこんな所知らないんだからな」

「ちッ、所詮はムッコルか」

「何だと。この、ポットめ！」

「言ったな！」

「お前こそ！」

　そんな僕も他所に、二人はあれからずっと、こちらも事ある毎に喧嘩を繰り返している。よくもまあ

指が痛くならないもんだ。

　そんな二人を見ながら僕はと言うと、当然関わり合いにならないようにしていたりする。それにしっ

かり目印を付けないと道を見失ってしまうから、他に構っている暇も無かったりするのだ。と、何気に

自己弁護。これが余裕を持って生きる為のコツだと思う、多分。いや、そう言うことにしておこう。そ

の方が幸せだから。

「おーい、そろそろ飯にしよう」

　しかし、空腹には勝てず、二人に声をかけざるを得なかった。

　すると、二人は喧嘩しつつも準備を始めた。まあ、準備と言っても食用苔を出して口に入れるだけな

んだけど。

「そう言えば苔も少なくなって来たな」

　ロッコルが危機感を持って呟く。

「いざとなったら、もうあれしかないかも」

　僕はそう考える度にぞっとする。そう今も側をカサカサ、シャカシャカと走り回り。その驚異的な繁

殖力で、すでに洞窟中を支配しつつあるのでは無いかと言われている奴を喰らうなんて・・・。

「そ、それは駄目だよ。愛しの君があんな美しく無いモノを食すなんて・・・・、美しく無い、それは

とても美しく無いよマイハニー・・・」

「しかしな、レット。いざとなったらもうそれしか・・・」

「うるさいムッコォ！」

「い、言うに事欠いてムッコォだと！この、この、ベットめ！！」

　しかしそのロッコルの言葉に、以外にもレットは何も言い返さず。衝撃の表情を浮かべて、押し黙っ

てしまった。まるでそれは何かを反芻でもしているかのように。

「ベ、ベットだって・・・・・・」

「何だ、文句あるのか。このベット野郎め！！」

　驚愕に悶えるレットに、更にロッコルが追い討ちをかける。

「な、な、な、なんて・・・・なんて美しい・・・。ベットだって、最高じゃないか」

　しかし予想に反してレットはそう言いながらロッコルの手を握り。

「ああ、君の事を誤解していたよ・・・。君がそんなに積極的だったなんて、君の愛を感じ取れなかっ

た私を許しておくれ・・・。今日からロッコル・・・君は私のマイスィートだ・・・」

「はッ？？？」

　混乱するロッコルを他所に、レットは潤んだ瞳で彼に抱き付いた。

　そしてここに新カップルが誕生したのかしないのか。

　僕はただ彼奴を喰らうか喰らわないか。そんな運命の泥沼に、ただただ足を掴まれていたのだった。　

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